セキュリティチームの ぐっちー です。エンタープライズ基準のセキュリティ / コンプライアンスを満たしつつ、Box上のコンテンツに対してLLMを連携させる「Box AI」が2023年11月にβ版として提供開始されました。本ブログでは情シスが気になるであろうポイントに沿って解説したいと思います。
- 本機能を利用するには Enterprise Plus のライセンスと管理者操作必要です。
- 本ブログの内容は、2023年12月11日時点までの情報を元に作成しております。
- 本機能はβ版としての提供であり、β期間中は新機能の追加や既存機能の改善が随時実施されます。
Box AIとは?
Box AIは、生成AIをBox上で使えるようにした機能群です。Boxが従来から注力してきたエンタープライズ基準のセキュリティ、コンプライアンス、プライバシーをそのまま引き継ぎつつ、生成AIを利用できるのが大きな特徴です。AIの力で、コンテンツの価値を引き出し、業務をより生産的にすることを目指しています。
Box AIの機能一覧
先ほど、Box AIは機能群という表現をしましたが、その配下には様々な機能が存在します。 現時点で発表のあった機能について下記でまとめています。また本ブログの下の方にも記載をしておりますが、 今後も機能アップデートが続いていく見込みです。
機能名 | 概要 |
---|---|
Box AI for Documents | 自然言語でドキュメントに関して質問すると、Box AIがその質問にドキュメントの情報をベースとして回答してくれる機能です。 |
Box AI for Notes | Box Notes で文章を作成する際に、下書きをしてくれたり、既にある文章の構成をしてくれたりする機能です。 |
Box Hub with AI(2024年β版提供予定 | 前提として、Box Hub とはBox上のコンテンツを駆使して、コンテンツポータルをノーコードで作成することができる機能です。 そして、そのBox Hub向けに開発されたAI機能が「Box Hub with AI」であり、Box Hubの情報を読み取って、Box Hubにある情報を理解したように対話ができるとのことです。(注:提供開始されていないため未検証) |
AIの基盤モデル
現時点で、Box AIでは、AI基盤モデルとしてOpenAI社のモデル(GPT-3.5)を利用しています。1 ただ、Box は中立なベンダーであるため、OpenAI(Microsoft)のモデルに限定されるわけではありません。今後のアップデートでは、他社のモデルを利用する可能性も考えられます。実際に、Google Cloudとはパートナーシップが締結されており、機能別に最適なモデルをBox社が選び抜いて提供してくださることが予想されます。2
基盤モデル学習への利用
生成AIを利用する上で1番気になるのは投入データの基盤モデル学習への利用です。そこに関しては、BoxのAI原則3に基づき、明示的な承認なしに顧客コンテンツを使用する学習はしないと明言されています。Boxはセキュリティやデータガバナンスを売りにしている関係で、重要なコンテンツを既にBox上に保管しているケースも多いと思いますが、そのようなケースであっても学習に利用されるリスクを回避してAIを利用できます。
読み込みデータのアクセス制御
続いて読み込みデータのアクセス制御についてです。Box AI の性質上、Box 上のコンテンツをインプットの一部としつつ、アウトプットを生成するため、読み取りデータの範囲がユーザーのアクセスできる範囲を超えてしまうと、情報の意図しない範囲の流通に繋がります。
そこに関しては、Box AI は原則として当該ユーザーがアクセス権限のある情報のみを参照してアウトプットを生成します。4そのため、データの過剰な読み取りによって、情報が漏洩するリスクはありません。
当該ユーザーがアクセス権限を持つ情報のうち、どこまでの情報を読み取って回答するかは、機能ごとに異なります。たとえば、Box AI for Documentsでは、現時点ではBox AI for Documentsを実行するファイルの情報のみを読み取りますが、Box Hub with AIではBox Hubの中の情報を読み取る等の差分があります。
ライセンス体系
現時点(β版)では、Enterprise Plus のライセンスを利用している企業は追加料金なしでBox AIをご利用いただけます。ただし、ユーザーあたり、企業あたりのクエリ数の月額上限が設定されています。
他のライセンスプランの場合は残念ながら利用することはできませんが、現在はβ版での提供開始という段階であり、GAされた後は広がって行く(あるいは別ライセンスとして提供される)可能性があるため、今後の続報をお待ちください。
有効化方法
Boxの[管理コンソール] > [Enterprise 設定] > [Box AI]のタブから有効化することができます。有効化にもユーザー単位やグループ単位、機能単位の有効化が可能です。
Box AI for Documents
「Box AI for Documents」5は自然言語でコンテンツ(ドキュメント)に関して質問することで、そのコンテンツのことを理解したAIから回答をもらえる機能です。例えば、市場調査レポートからインサイトを導き出したり、プレゼンテーションの要旨を教えてくれたりできます。
この「Box AI for Documents」は以下のようなユースケースで利用することが考えられます。
- ドキュメントの要約
- ドキュメントから示唆を引き出す
- 英語のドキュメントを解説してもらう
「Box AI for Documents」の対象ドキュメントや現時点での制約事項はサポートサイトをご覧ください。
Box AI for Notes
「Box AI for Notes」6は、Box Notes に組み込まれたAI文書作成の補助機能です。Box Notesは従来から提供されていたBoxの中にメモ帳を作れる機能で、同時編集ができるというのが大きな特徴です。「Box AI for Notes」を使うと、生成AIの力を借りて、コンテンツの下書きを数秒で作成できます。
また、Box Notes内のコンテンツを選択して、要約や構成等をお願いできます。さらに、生成されたコンテンツを追加指示で洗練させる「リファイン」というオプションも用意されています。
この「Box AI for Notes」は以下のようなユースケースで利用することが考えられます。
- 下書き生成:
- ブログの下書きを生成
- プレスリリースの下書きを生成
- 技術文書(要件定義書)等の下書きを生成
- レポートの下書きを生成
- 校正:
- 表現を変更
- 誤字脱字を修正
- 翻訳
おわりに:これはあくまで序章
今回β版として提供されたのは上記の2つの機能でしたが、これは序章に過ぎないと考えています。裏側にある生成AI(OpenAI)のモデルはどんどん進化を遂げていますし、それに付随して精度も機能も向上していくことが予想されます。
実際に、Box社からも下記のような新機能追加予定が公開されており、今回のβ版リリースはスタートラインに立ったに過ぎないと考えています。さらに、上記の2つの機能に関しても、精度などの面で向上が期待できます。そのため、現時点でできるタスクを見極めつつ、社内に着実に広げて使える人を増やしていくことが現時点では大事なのように思えます。
もし、「あんな機能がほしい」「こうなったらいいのにな」という要望があったら、下記の機能リクエストページに起票したり、既に投票されているリクエストに投票していただけたら幸いです。生成AIの活用はまだ始まったばかりですので、クラウドサービス事業者もユーザーも一緒になっていいサービスを作っていけたらいいと思っています。
関連動画
参考文献
- コンテンツのためのセキュアなエンタープライズAI | Box AI
- Box社員はBox AIをどのように使っているのか!?
- Box on Box!Box社員はBox AIをどう使っているのか
- Box、企業内のコンテンツ公開に革新をもたらす新機能「Box Hubs」を発表 | BoxSquare