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起票されなかったタスクに誰が気づくのか。AIの「正常完了」に隠れた取りこぼしを拾う8つの決めごと

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Shota Nakano

経理担当

経理担当のShotaです。今回は日々のタスクの洗い出しをAIに任せてみて分かった、気づくまでに時間がかかった失敗の話です。

やるべきことの一覧を開いて、今日の段取りを決める。経理にかぎった話ではないと思います。ただこの確認の仕方には前提がひとつあります。やるべきことがその一覧に載っていることです。

私はこの前提が崩れていたことにしばらく気づけませんでした。間違ったタスクが立っていたわけではありません。立つはずのタスクがはじめから立っていなかったのです。

この記事の3行まとめ

  • AIが起票しなかった依頼は画面に出てこないので、期日を過ぎるまで誰も気づかない
  • 取りこぼしは、AIが「これは期日のある依頼ではない」と判断した時に起きる。だから形ではなく内容で判定させ、迷ったものは捨てさせない
  • 見つけ方はほぼ1つ。週に一度、起票された側ではなく「起票されなかった側」を逆から見る

起票されたタスクだけを見ていても取りこぼしには気づけません

チャットツールとメールを毎晩AIに読ませて、期日のある依頼をタスクとして起票させています。朝はその一覧を見て、その日の段取りを決めます。一覧に並んでいるものがその日の全部だと、疑いもせずに思っていました。

経理に来る依頼は形が揃っていません。チャットツールで「この請求書、今月中でお願いします」と流れてきたり、メールの本文にだけ支払期限が書かれていたり。決まった場所に集まってはくれないので、拾うかどうかの判断は機械の側に寄ります。

拾われていなかった依頼は別の経路から知らされました

気づいたきっかけはAIの報告ではありませんでした。支払期限が近づいた頃に別の経路から確認が来て、そこで初めて「この依頼、タスクになっていない」と分かりました。前日の分を見返すと、依頼そのものはちゃんと届いています。AIも動いていて、その日の他の依頼は問題なく起票されていました。その1件だけが、拾われていなかったのです。

起票された分だけを見ていると、離れた1枚は視界に入りません

見送られたものを並べてみると、共通点がありました。

  • 件名には何も書かれておらず、本文の最後に一言だけ「◯日までにお願いします」と添えられているもの
  • 雑談のやり取りが続いた流れで、途中に締切つきの依頼が混ざっているもの
  • 依頼の言葉が使われておらず、状況の共有として書かれているが、事実上こちらの対応が必要なもの

どれも、人が読めば「これは対応が要るな」と分かります。ただ機械的に見分けるには境界線の上にあります。AIは間違えたというより、境界線の上で「これは違う」と判断したわけです。

ここが取りこぼしの正体でした。判定を「拾う」か「拾わない」の二択にしている限り境界線上のものは必ずどちらかに倒れます。そして倒れた先が「拾わない」だった時、そのことはどこにも残りません。

怖いのは間違いより気づけないこと

間違って起票されたタスクは、実はそれほど怖くありません。画面に出てくるので、見れば分かるからです。「これは違うな」と消せば終わりです。

怖いのは、起票されなかった側です。こちらは画面に何も出ません。人は出てきたものが正しいかどうかは確かめられます。ところが、出てこなかったものについては確かめようという気持ちすら起きません。並んだタスクを一つずつ丁寧に確認しても、並んでいないタスクは視界に入らないのです。

しかもそこに「正常に完了しました」「該当は3件でした」という報告がついてきます。この報告があると、確認した気持ちになってしまいます。ただよく考えるとこの3件はAIが拾えた分の数です。拾えなかった分ははじめから数に入っていません。報告はAIが見えた範囲の話でしかないのです。私はここを取り違えていました。

期日のあるタスクでこれが起きると、行き着く先は支払いの遅延です。取引先に迷惑がかかりますし、社内の信用も落ちます。「AIが拾ってくれなかったので」は当然ながら理由になりません。

AIへの任せ方を4つ変えました

そこで任せ方そのものを見直しました。

  1. 形ではなく内容で判定させる。件名に特定の言葉が入っているか、添付ファイルがあるか、といった形で判定すると、形の揃わない依頼をまとめて取りこぼします。「本文が、いつまでに何をしてほしいと言っているか」で判定させます。迷ったら拾う側に倒す、を初期設定にします。
  2. 拾った理由と見送った理由を残させる。なぜ起票したのか、なぜ見送ったのかを一言ずつ記録させます。あとで取りこぼしを見つけた時に、判定基準のどこがずれていたのかを具体的に直せます。理由の残っていない判断は直しようがありません。
  3. 迷ったものは捨てさせずに「判断待ち」として出させる。手応えがはっきり出たのは、この3つ目でした。拾うか拾わないかの二択にすると、境界線上のものは黙って消えます。そこに3つ目の置き場所を作って、迷ったものはそこへ出させます。人が見る数は少し増えますが、消えるものがなくなります。
  4. 起票したら一覧を開き直して確かめさせる。起票した「つもり」で終わらせないということです。振込を実行したあとに通帳の明細で突き合わせるのと同じで、タスクの一覧を開き直してそこに並んでいることを確かめるまでは完了にしません。さきほどの「該当は3件でした」と同じことで、「登録しました」という報告は、登録された証拠にはならないからです。

二択にすると境界線上のものは消えます。3つ目の置き場所があれば残ります

人がやることを4つ決めました

AI側を整えても、人の側に残る仕事があります。むしろここを決めておかないと仕組みが形だけになります。

  1. 毎朝決まった時間に見る。気が向いた時に見る運用にすると、依頼が多い忙しい日ほど確認が飛びます。朝の数分を固定して、この逆転を防ぎます。
  2. 要らないものは黙って消さずに「却下」として返す。ここは意識して変えました。黙って消すと、AIは同じものを翌日もまた拾ってきます。却下として返せば、それが次の判定の材料になります。消す作業を教える作業に変えるという感覚です。
  3. 週に1回は起票されなかった側を逆から見る。起票されたタスクをいくら眺めても、取りこぼしは見つかりません。週に一度、前の週のチャットとメールを期間で見返して、「これは起票されているべきだったのでは」という目で探します。ここで見つかったものが判定基準のどこを直すべきかをそのまま教えてくれます。
  4. 期日を守る責任は人が持ち続ける。AIが拾わなかったとしても、遅れた責任はこちらにあります。この線を曖昧にすると、確認そのものが甘くなります。この線引きは読み取りはAIに、確定は人にで詳しく書いています。

逆に拾いすぎも失敗です

ここまで「取りこぼさないように」と書いてきましたが、逆側にも失敗があります。取りこぼしを怖がって広く拾わせすぎると、関係のないものまで大量に起票されます。

そうなると、朝に見るタスクの数が増え、一つずつ確認するのが面倒になります。やがて流し読みになり、最後には見なくなります。人が見なくなった時点で起票されていても起票されていないのと同じです。取りこぼしを防ぐつもりの設定が、別の形の見落としを生んでしまいます。

私が今のところ良さそうだと感じている順番は、まず広めに拾わせて、却下を積み重ねながら絞っていくやり方です。最初から厳しくすると、何を取りこぼしているのかが分からないまま運用が固まってしまいます。広く拾って却下で削る方が、判定の理由が手元に貯まっていく分、直しやすいと感じています。

明日からの一歩

8つ書きましたが、明日から始めるなら週に一度は拾えなかった側を逆から見るところだけで十分です。AIを使っていなくても同じです。受信箱を上から片づけている人なら、開いて読んだだけのメールが既読になって視界から消えていきます。既読になったことと対応したことは別です。

この一歩を最初に挙げるのは、私の手元で実際に効いているからです。毎日の起票では今も漏れが出ます。それでも週末に見返す運用で拾いきれていて、支払いの遅延には至っていません。

前の週のチャットとメールを期間を決めて見返してみてください。見るのは「手元のリストに載っているもの」ではなく、「載っていないのに、対応が要りそうなもの」です。1件でも見つかったら、それは自分の見分け方を直すための具体的な材料になります。見つからなければ、その週は取りこぼしがなかったという確認で済みます。どちらに転んでも、確かめたことにはなります。

向きを逆にしないと、そこに無いものは見つかりません

もう一つ足せるなら、自分がふだん「これは期日のある依頼だ」とどう見分けているのかを言葉にして書き出してみることです。頭の中でやっている見分け方を書き出すと、それがそのままAIに渡す判定基準になります。AIに任せる範囲を広げる時も、この言語化が出発点になります(AIと決算チェックの記事でも同じことを書きました)。

まとめ

AIに任せた仕事で本当に怖いのは、間違った結果が返ってくることではありません。返ってこなかったものがそもそも見えないことです。

だから、AI側では内容で判定させ、理由を残させ、迷ったものは捨てさせず、起票したら読み直させます。人側では毎朝決まった時間に見て、要らないものは却下として返し、週に一度は起票されなかった側を逆から探します。そして、期日を守る責任は自分で持ち続けます。この8つで変わったのは、黙って消えるものがなくなったことです。迷ったものは判断待ちに残ります。要らないと返したものは次の判定の材料になります。手元に残っていれば、あとから確かめられます。

経理のミスは入口をそろえれば防げる、と以前書きました。今回の話も結局は同じで、タスクの入口をそろえるかどうかの問題でした。

前の記事(先月は来ていた請求書が、今月は来ていない)では、処理そのものが動かなかった時に「無いこと」へどう気づくかを書きました。今回はその対になる、動いてはいたのに取りこぼしていた側の話です。原因は違いますが、起票されなかったものは画面に出てこないという一点は共通しています。

ここに書いたのは私一人の手元でのやり方にすぎません。ただ会社としてAIの使い方のルールを決める時にも、やることは大きくは変わらないはずです。任せた結果を後から確かめられるようにしておく。その一点さえ押さえておけば、任せられる範囲は少しずつ広げていけると思っています。

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