決算チェックをAIに任せて分かった、入力の工夫

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Shota Nakano

経理担当

経理担当のShotaです。先日、当社の決算を一通り終えました。今回はそのなかで気づいた、「AIに決算チェックを任せるなら、会計入力の側にも工夫が要る」という話をまとめます。

この記事の3行まとめ
- AIに決算チェックを任せると、確認の工数は確かに下がる
- ただし"そのまま"では効かない。AIが読める形に会計入力を整える工夫が前提になる
- 工夫すると仕訳は増えるが、テンプレートやAPI連携・RPAの下準備で人力入力は避けられる

これまで人力でやってきた決算チェックを、今回AIに任せてみた

正直に言うと、これまでの締め作業も、今回の決算も、確認のかなりの部分は人力でした。残高の突合、勘定科目の振り分け、前期との比較——目で追って、電卓を叩いて、Excelに並べて見比べる。経験者の方なら、この「ひたすら目視で確かめる時間」のイメージは共有していただけると思います。

今回は、その確認作業をあらためてAIに任せてみました。結論から言えば、工数は確かに下がります。仕訳の山を渡して「おかしいところを挙げて」と頼めば、人間なら見落としがちな金額のズレや、いつもと違う勘定科目の動きを検出してくれる。これはありがたい。体感では、これまで目視で半日かけていた突合が、「ここを重点的に見ればいい」と当たりをつける段階までは数十分で済むようになりました。

ただ、手放しで「これで楽になった」とは言えませんでした。AIに渡した仕訳が"そのまま"では、十分に効かない場面があったのです。原因をたどると、問題はAI側ではなく、こちらの会計入力の作り方にありました。

つまずき:AIは「複合仕訳」が苦手だった

いちばんつまずいたのが、複合仕訳でした。

借方・貸方に複数の科目がぶら下がる複合仕訳は、人間が見れば「ああ、この取引ね」と一括で理解できます。ところがAIにチェックさせると、どの借方がどの貸方に対応しているのか、その対応関係をうまく追えないことがありました。1本の仕訳のなかに複数の意味が詰まっていると、AIにとっては"読みにくい"のです。結果として、本来拾ってほしい異常を見逃したり、逆に問題のないものを怪しいと指摘したりする。なお、これはAIの一般的な限界というより、仕訳の渡し方を工夫しない現状の運用での話だと考えています。

そこで方針を切り替えました。できるだけ複合仕訳を避け、単一仕訳(1取引1仕訳)で計上する。 1本の仕訳には1つの意味だけを持たせる。こうするとAIは取引の対応関係を素直に追えるようになり、チェックの精度がはっきり上がりました。

口座間振替は「資金外諸口」で見通しを良くする

単一仕訳化でとくに効果が大きかったのが、口座間の振替です。

A口座からB口座へお金を移すような取引を、預金同士で直接振り替える仕訳(借方:B口座/貸方:A口座)にすると、これ自体は借方1・貸方1の単一仕訳です。ただ、これがAIには読みづらい。科目だけを見ても「これは口座間の資金移動であって損益には関係ない」と判別しにくく、残高や損益のチェックにとってはノイズになりやすいのです。そこで、あいだに「資金外諸口」を挟みました。A口座からの出金(借方:資金外諸口/貸方:A口座)と、B口座への入金(借方:B口座/貸方:資金外諸口)を、資金外諸口を経由してそれぞれ独立した仕訳に分解するわけです。経由した資金外諸口は、期末には貸借が相殺されてゼロに戻ります。

こうすると、入金は入金、出金は出金として一本ずつ並びます。AIから見れば、取引の流れがそのまま線でつながって見える状態です。視認性が上がり、振替の取り違えや計上漏れも見つけやすくなりました。

工夫の代償:仕訳数は増える。でも人力では入力しない

ここまで読んで気づいた方もいると思います。複合仕訳をやめて単一仕訳に分ければ、当然、仕訳の本数は増えます。資金外諸口を挟めば、1つの振替が2本になる。チェックは楽になっても、入力の手間が増えてしまっては本末転倒です。

なので大事なのは、増えた仕訳を人力で入力しないこと。入力作業そのものを仕組みで吸収するのが前提になります。

インポート用テンプレートを先に作る

まず取り組みやすいのが、インポート用テンプレートの整備です。毎月・毎期くり返し発生する定型取引は、フォーマットを決めてCSVなどでまとめてインポートする。1件ずつ手入力していた作業を、テンプレートへの貼り付け+取り込みに置き換えるだけでも、手数はかなり減ります。

API連携・RPAで「拾って・整えて・流す」を自動化

さらに進めるなら、API連携やRPAの出番です。銀行やクレジットカード、各種サービスからAPIでデータを取得し、必要な形に整形して、会計ソフトへのインポートまでを自動で流す。「拾って・整えて・流す」の一連を仕組みにしてしまえば、仕訳が増えても入力負荷はほとんど増えません。ここが下準備の本丸だと感じています。

鶏が先か卵が先か——でも、止まらないために

ここで悩ましいのが、順番です。AIが読みやすい入力にするには準備(テンプレやRPA)が要る。でも、その下準備をするには「どういう入力にするか」の設計が先に決まっていないといけない。まさに鶏が先か卵が先か、です。

私の結論は、「完璧な順番を待たないこと」です。最初から全部を仕組み化しようとすると、いつまでも始められません。それよりも、自社にとって取り組みやすいところ——たとえば件数の多い定型取引のテンプレート化など——から手をつけて、少しずつIT化の範囲を広げていく。動かしながら設計を直していくほうが、結果的に早く進みます。

まとめ:AIに"読ませる"前提で会計を設計する

今回の決算で得た実感は、シンプルです。チェックはAIに任せられる。ただし、その効果を引き出すかどうかは、人がどう会計を入力・設計するかで決まる。

複合仕訳を避けて単一仕訳にする、口座間振替は資金外諸口で分解する——こうした「AIに読ませる前提の作り込み」と、それを支える土台づくりが、AI活用の起点になります。チェックはAI、設計と判断は人。この役割分担を意識しながら、まずは自社が取り組みやすいIT化から、一歩を踏み出してみてください。

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