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営業からPMへの転職は、ジョブチェンジじゃなかったかもしれない(1)PMは営業の「延長線」なのか?

kenken
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プロジェクトマネージャー

はじめに

こんにちは!kenkenです。

以前、IT営業からPMに転職して1年|営業スキルはこう活きたという記事で、「営業で積み上げてきたものは、何一つ無駄になりません。出す場面と向きを変えるだけです」と書きました。その記事の最後に「来年振り返ったら違うことを書いているかもしれません」とも書いたのですが、1年待たずに書くことが変わり始めました。

というのも、最近の自分を振り返っていてある一つの問いが浮かんだからです。

それが「営業からPMへの転職は、そもそもジョブチェンジだったのか?」でした。転職した本人が言うのも変な問いです。もちろん、この問いは最初からあったわけではありません。転職してからの1年あまり、「営業とPMは何が違うのか」という仮説を作っては壊してきた先にあったものを、改めて見てみたときに出てきたのが、この問いでした。

改めて前の記事を読んでみると、営業とPMの違いについては「主役と舞台監督」という立ち位置の比喩までは書けていました。ただ、記事の大半は「スキルがどう活きたか」、つまり道具の話です。道具の使い方をいくら並べても、立ち位置を一言でたとえても、「営業とPMという仕事そのものは、何が違うのか」のイメージは十分ではありません。どんな考えに基づいて道具を使っていくか、もあって初めて営業とPMの違い、そしてPM観、PMとしての美学がイメージできます。

この連載は、営業とPMの違いを自分の言葉で表現し、自分のPM観を磨こうとした道のりの記録です。転職直後のつまずきから始めて、言語化を試みては失敗する過程をありのままに書いていきます。まず今回は、転職直後のつまずきから「営業とPMは何が違うのか」という問いが立ち上がるまでを書きます。

そもそも:PMは営業の「延長線」だと思っていた

突然ですが、RPGにも「転職」というシステムがあるのはご存じでしょうか?ゲームでの転職には、大きく二つの型があります。前の職とは無関係に、新しいジョブがレベル1から始まる型。そして、前の職のレベルによって転職可能となり、覚えた特技や呪文は引き継がれる、例えば戦士と魔法使いの経験があって初めて魔法戦士になれるような型です。

営業からPMへ移るとき、私は後者をイメージしていました。PMは営業の延長線にある仕事で、営業で学んだことをそのまま土台にできる、営業経験の先にある、ゲームで言うなら「上位職」。営業スキルの強化版が手に入る、ある意味で同じ系統の職業だと考えていました(職業としてPMが営業の上位という意味ではなく、あくまで自分のスキルアップの道筋としての例えです)。なので、PMとして新しいスキルを覚えることだらけの日々になるだろう、という覚悟は持って入社しました。

実際、新しく身につけるスキルもありましたが、営業で使っていたスキルを使える機会も多くありました。ただ、最初の壁は新しいスキルではなく、その引き継いだスキルの使い方でした。

最初の壁:引き継いだスキルを使うのが正解なのか

ある案件のことでした。スコープに入れるかどうかが微妙なラインの要望をもらったとき、ここで営業から引き継いだスキルである「できない理由より、できる方法を考える」が反射的に発動しました。困っている顧客を前にしたら、断る理由を並べるのではなく、要望の全部に応えられる方法を探す。営業だった頃の成功体験を横展開しようとして、同様の相談をいただくたびに実現できる方法を探していました。そしてその度に、諸先輩方にカットインいただき、後でフィードバックをもらいました。

スキルや考え方そのものを否定されたわけではありません。できる方法を考えても、その影響が見えないままPMが「できます!」と舵を切れば、そのしわ寄せは計画と計画の中で働くチームに向かい、顧客との次の対話を担う営業にも影響が及ぶ。それを考えずに動いてはいけない、ということでした。もちろんそれに向けてどうすればいいかも、様々な視点から教えていただきました。

その中でも中心となるマインドセットが「最優先で守るべきものは、プロジェクトの円滑な進行」。つまり、顧客の要望を含めて起こった事象は全てプロジェクトの円滑な進行にどう影響するのかを最優先で考える必要があるというPMの根幹となる考え方でした。その立場で考えてみると、その相談がプロジェクトにどう影響するのか、それの実現はプロジェクトとそのスコープにとって本当に正しい打ち手なのか、応えるなら工数はどれだけ増えて、スケジュールや他の作業との関係はどう変わるのかなど、できる方法を先に考えることでプロジェクトが円滑に進まなくなる可能性はいくつもありました。

スキルは手元にあり使えるものでしたが、出す順番が変わっていました。営業では、できる方法を考えるのが最初の一手。PMでは、プロジェクトへの影響を確かめるのが先で、できる方法を考えるのはその後。同じスキルでも、何を最優先にするかが変われば、出す順番が変わります。

二番目の壁:良かれと思った先回りが、空回りする

順番が分かってからは、反射のまま動くことは減りました。影響を確かめる→やるかどうかを判断→やるならできる方法を考える。そこで次にプロジェクトの円滑な進行のために自分が巻き取れるタスクは全部拾おうとしました。エンジニアの負荷が少しでも下がれば、そのぶん進行は円滑になるはず。そう考えて、動ける場面では先回りして動こうとしました。

ところが、これも空回りしました。たとえば資料作成。まず私の認識でたたき台を作り、エンジニアに直してもらう流れを考えたのですが、結局確認して修正するのがエンジニアなら、それは二度手間、エンジニアのやりやすい進め方とも言い切れず、時間はかかるのに価値が出ない。お金の話も同じで、わかる範囲で答えても、違っていれば営業が訂正に回る二度手間になり、その差分がひどいときは謝罪まで発生します。

求められていたのは、「自分がどこまでやるか」ではなく「誰が何をやることが、プロジェクトの円滑な進行につながるのか」という考え方。一番工数が少なく、一番価値の出せる割り振り。自分が動くことが、必ずしも貢献にはならない。ここで役割の線引きについて考えさせられました。

先輩たちからは、明快な線をいくつかもらいました。「PMの本分はプロジェクトを成功裏に着地させること」「お金の話は、必ず営業から出す」。こういった線は今も私の判断の柱になっています。

模索:線引きをしてもまだ迷う

このあたりで、私は入社時の見立てを改めました。PMは営業の上位職ではない。スキルは活かせても、スタンスと目的が異なる「別の職業」なのだ、と。書いてみれば当たり前のことではあるのですが、当時の私はこれを自分の言葉にできていませんでした。前作で「捨てるべきスキルはありませんでした」と書いたのは、まさにこの整理の上に立った話です。

別の職業だと割り切れば、あとはその前提で線を引いていくだけのはずでした。それでも、判断に悩むシーンはたくさんあります。たとえば、定例の場で「ざっくりどれくらいかかりそうですか」と聞かれたとき。お金の話は営業からとしても、その場で実例ベースで伝えるのはどうなのか。あるいは、PMのみで参加した打ち合わせ中に聞かれる「これって技術的にできるんですか?」という質問。知っている範囲で答えるのは自然な会話ですが、その場の見立てが「PMがこう言っていた」として独り歩きすることもあります。どこまでが誠実な即答で、どこからが持ち帰るべき話なのか。

線を教わっても、次の場面ではまた別の線が必要となる。なぜこんなに線引きに迷うのか。

気付き:線引きが目的になっていないか?

線引きを繰り返すうちに、あるとき立ち止まりました。線を引くこと自体が、いつの間にか手段ではなく目的になっている気がしたのです。そもそも、何のために線を引きたかったのか。一から考え直すことにしました。

答えははっきりしていました。目の前の場面ごとに、誰が動くべきか、自分は何をどこまでやるのか・話すのかを判断するためです。だとすれば、必要なのは線そのもののストックではなく、線を自分で導き出すための考え方でした。

では、その考え方はどこから来るのか。営業との違いから導けそうにも思えます。ただ、二つの壁を思い返すと、判断の拠り所はどちらも営業との差分ではなく、「プロジェクトの円滑な進行」という、PMの仕事そのものの理解でした。そもそもPMとはどういう仕事なのか。それを自分の言葉で言えることが、線引きの土台だったのです。

そこで、PMという仕事の言語化を試みました。とはいえ、ゼロから言葉にするのは雲をつかむような話です。手がかりにしたのは、自分が一番よく知っている仕事、営業との比較でした。ところが、見つかるのは違いではなく、むしろ類似点でした。使っているスキルが営業の頃とほとんど同じなのです。プロジェクトへの影響を考えてから、という前提はあるものの、工数の感触を口にする、技術的にできそうかを見立てる、資料のたたき台を作る、できる方法を考える。ジョブチェンジしたはずなのにスキルの一覧はほとんど変わっていない。違ったのは、何を最優先に、どの順番で、誰が出すかという、使い方の側だけのように見えました。

こうなると、わからなくなってきます。入社したときは、PMを営業の延長線にあると思っていたが、働くうちに「別の職業」だと考えを改めた。それなのに、別の職業と考えて違いを探すほど、二つの仕事はまた延長線に見えてくる。入社時に思い描いた「上位職」ではない。かといって、まったくの別物とも言い切れない。だったらこのPMって何なのか。営業と比べてどういうものなのか。

この問いに答えるべく、PMという仕事を営業との違いも含めて自分の言葉で言えるようになるまでの、延々と続く言語化と仮説作りの旅が始まりました。

次回予告

次回は、最初の仮説を立てて、腹落ちして、崩れるまでを書きます。まだまだ迷い続けます。

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