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営業からPMへの転職は、ジョブチェンジじゃなかったかもしれない(2)「準備の型化」で説明できると思っていた

kenken
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プロジェクトマネージャー

はじめに

こんにちは!kenkenです。

この連載は、営業からPMに転職した私が、営業とPMの違いを自分の言葉で表現しようとした道のりの記録です。

前回の記事では、営業の延長線にある仕事のつもりで転職し、引き継いだスキルの出す順番と役割の割り振りでつまずき、一度は「別の職業」と見立てを改めたものの、PMという仕事を自分の言葉で言えることが線引きの土台だと気づくまでを書きました。ところが営業と比較して言葉にしようとすると、見つかるのは違いではなく類似点ばかり。今回から、その違いを探す仮説作りが始まります。

先に言ってしまうと、この記事で立てる二つの仮説は、今日から使える部分はありつつも、どちらも「正解」ではありませんでした。

仮説1:準備の「型化」のレベルが違うのではないか

スキルの一覧が同じなら、違いは使う前、つまり準備の段階にあるのではないか。最初に立てたのは、そんな仮説でした。

きっかけは、先輩たちから教わったPMの打ち合わせ準備でした。打ち合わせの前に、話がどこで分かれ、参加者がそれぞれどう受け止めそうかまで含めて、シナリオを描いておく。決めるのは顧客でも、その場で判断できるだけの材料と道筋をそろえておくのがPMの準備だ、と教わりました。この準備を、私の営業時代の商談準備と並べてみたのが、仮説の出発点です。

まずは、私の営業時代(IT業界)の商談準備を解剖してみます。中身は、商材知識、想定問答、トークスクリプト。つまり「話す中身」そのものが、あらかじめ型化されていました。現場でやるのは、型の中からの選択と、相手の対応に合わせるための多少の即興です。この型のインプットができたことで、同じ商材の商談なら、何百回でも安定して戦えました。

一方、PMの打ち合わせ準備。PMBOKガイド(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)を発行するPMIは、プロジェクトを「a temporary endeavor undertaken to create a unique product, service, or result」と定義しています。筆者なりに訳すと「期限があり、独自の成果を生み出すための取り組み」。プロジェクトごとに目的も成果物も違うので、打ち合わせの中身も毎回違います。今日は要件の議論、来週は移行の段取り、その次はトラブルの収拾など。そのため事前に型化しておけるのは会議の回し方・問いの立て方・リスクのパターンといった「進め方」だけ。先輩たちに教わったシナリオも、中身は打ち合わせのたびに描き直すもので、型として残るのは「シナリオの立て方」の方でした。

営業の商談準備PMの打ち合わせ準備
準備するもの商材知識・想定問答・トークスクリプトシナリオ(話の分かれ道、参加者の受け止め方)
中身の使い回し同じ商材なら何百回でも使える打ち合わせのたびに描き直す
事前に型化できるもの話す中身進め方(会議の回し方・問いの立て方・リスクのパターン、シナリオの立て方)

営業は事前準備で「話す中身」まで型化できる。PMが事前に型化できるのは「進め方」だけ。この整理ができたとき、けっこう腹落ちしたんです。実務の感覚とも合っていました。たとえば、一度経験したケースを事例としてインプットしておけば、打ち合わせでまったく同じケースに出会ったときには手を打てます。ところがPMの場合、同じように見えるケースでも、状況やステークホルダーが違えば、まったく同じになることはほとんどありません。事例のインプットはしておくものの、それだけでは対応しきれない。だから事例そのものではなく、進め方の方を型にしていけばいいのだ、と。

ただ、営業の事前準備にも、商談の大まかな進め方という型があります。アイスブレイク→ラポール(信頼関係づくり)→説明→ネガ収集(懸念の聞き出し)→切り返し→クロージングという流れは、話す中身ではなく「進め方」の型です。逆にPMの事前準備にも、議事進行のテンプレートのような「話す中身」寄りの型があります。

つまり、事前準備における「営業=話す中身の型、PM=進め方の型」という切り分けは、傾向としては正しくても、排他的な違いではありませんでした。そして何より、前回書いた、「別の職業だと割り切ったはずなのに線が引けない」感覚を、型のレベルの話だけでは説明しきれない。

崩れはしたものの、この仮説で手元に残ったのは、PMでも進め方なら型にできる、と言葉にできたことでした。

仮説は、作り直しです。

仮説2:積み上がるものが違うのではないか

仮説1は、事前に何を型にできるかという「準備」の話でした。次に考えたのは、その反対側です。経験を重ねた後に何が積み上がっていくかが違うのではないか。

営業を思い出すと、商材が固定で、相手が毎回変わるという形でした。同じ内容の会話を、違う相手と何百回も繰り返す。だから会話そのものの練度が上がっていく。断られ方すらパターン化できていました。

PMは逆です。相手が固定で、課題が毎回変わる。違う内容の会話を、同じ相手と何ヶ月も続けます。会話の中身は毎回初見なので、内容の練度は積み上がりません。代わりに積み上がっていくのは、「この人はこういう判断をする人だ」という相手への理解でした。シナリオで描く「参加者の受け止め方」が少しずつ当たるようになっていったのも、この蓄積のおかげでした。

当時は、この対比で説明がつくと感じていました。PMになってから、営業時代のような「会話が上達していく感覚」がなかなか来なかったのも、積み上がるものが会話の練度から相手への理解に変わったからだ、と。

ただ、この整理にも穴がありました。改めて比べてみると、営業でも、商材が変わっても相手の置かれた状況が同じなら、話す内容はそれほど変わりません。PMでも、同じ背景から出てくる課題は、相手が違っても同じ形で現れます。どちらも、話の中身を決めていたのは商材や相手ではなく、その裏にある状況や背景でした。だとすると、積み上がるものの違いも、商材と相手のどちらを固定するかで生まれていたわけではなかったことになります。

崩れはしたものの、この仮説で手元に残ったのは、PMでは相手への理解が積み上がっていくこと、そして話の中身を決めているのは状況や背景だ、と言葉にできたことでした。

次回予告

二つの仮説は、どちらも正解ではありませんでした。それでも、崩れるたびに新しい気づきがあり、正解には少しずつ近づいている感覚がありました。

次に私が目をつけたのは、PMになってからずっと感じていた、ステークホルダーの状態を追い続ける負荷でした。次回は、「PMは変数が多くて難しい」とよく言われることの正体を掘ります。

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