IT営業からPMに転職して1年|営業スキルはこう活きた

はじめに

こんにちは、PMのkenkenです。

元IT営業マンだけど、PMに転職した件」を書いてから、気づけば1年が経ちました。

いまだ先輩やチームに助けられながら、毎日が学びの連続です。あのときは入社2日目で「不安はだいぶ払拭された」なんて元気に書いていましたが、1年やってみて改めて思うのは——営業で身につけたスキルは、PMになっても一つも無駄になっていない、ということです。

ただし、「そのまま効いたもの」と「使い方を変えたら効いたもの」がありました。

結論を先に言うと、捨てるべきスキルはありませんでした

変わったのは「どの場面で、どの向きに出すか」だけです。この記事では、営業からPMへ移った1年で見えてきた「営業経験の活かし方」を整理します。

営業からPMやプロジェクト推進側へ移りたい方、未経験でPMになって不安な方の、棚卸しの材料になれば幸いです。

クラウドネイティブが求めるPM像

私の話に入る前に、そもそもクラウドネイティブでPMがどんな役割を求められているのかを整理しておきます。ひとことで言えば、「お客様にとっての真の最適解を、実装可能で運用に耐える形まで実現する」推進役です。製品を入れて終わりではなく、運用に乗るところまで見届ける。ここが軸になります。

具体的には、こんな動きを担います。

  • 顧客と密に連携し、本質的な課題を見極める
    • セキュリティに潜む本当の論点を、お客様との対話から掘り起こす
  • 要件定義と期待値調整で方向性を定める
    • 何を実現し、どこまでをスコープにするかを最初に握る
  • シナリオ分析と逆算で戦略を立てる
    • 未来を見据え、ゴールから逆算して最適な進め方を設計する
  • エンジニアチームを推進する
    • タスク管理だけでなく、メンタル面も支えながらチームを前に進める
  • 定例で進行管理と成果報告を回す
    • 進捗とリスクを可視化し、こまめに共有する
  • 次の提案につながる対話を続ける
    • プロジェクトの中で、お客様の次の課題にも目を向ける

体制も特徴的で、PMはメイン・サブの2名でチームを組み、PMOチームや各製品に精通したエンジニアと連携してプロジェクトに臨みます。一人で抱えるのではなく、チームで多様な産業・領域の課題解決に取り組む形です。

そして当社がPMに最も求めるのは、スキルや資格より前に相手(お客様もチームも)の心情・立場・背景に関心を持ち、双方の心理的安全性を確保しながらプロジェクトを主導する力だと感じています。コミュニケーション力、柔軟性、学習意欲、そして「他者への価値提供」という姿勢。ここに尽きます。

逆に言うと、それを実現しながらプロジェクトを成功に導く方法は一つではなく、各PM毎に多彩なスタイルがあり、それを確立することも求められています。

この「CNが求めるPM像」を念頭に置いたうえで、では営業とPMは何がどう違うのか。私なりの定義に入っていきます。

営業とPMを経験した、私なりのPMスタイル

スキルの話に入る前に、営業とPMがどう違う仕事なのかを整理しておきます。

まず公式の定義から。

プロジェクトマネジメントの国際標準を策定するPMI(米国プロジェクトマネジメント協会)は、その指針書「PMBOK Guide(第7版)」で、プロジェクトを「独自の成果物・サービス・結果を生み出すために行う、有期性のある取り組み」と定義しています。

あわせてプロジェクトマネジメントを「プロジェクトの要求事項を満たすために、知識・スキル・ツール・技法を適用すること」としています。

ポイントは2つ、「有期性=始まりと終わりがある」と「独自性=毎回ユニーク」です。これが営業との対比をはっきりさせます。

観点営業プロジェクト(PM)
時間軸継続的(終わりなく回し続ける)有期(始まりと終わりがある)
反復性同じプロセスを磨いて反復する毎回が独自・一回性
成果の形数字を継続的に積み上げる固有の成果物を一度生み出す
主な動き自分で受注を取りに行く関係者を動かして着地させる

営業は「継続オペレーション」に近く、同じ提案・商談のプロセスを磨いて反復し、数字を積み上げる仕事です。一方プロジェクトは毎回が一回限り。同じ案件は二度と来ない前提で、有期のゴールに着地させるのがPMの仕事です。

これを前提としてみると、仕事の性質と並んで大きいと感じる違いが、自分の立ち位置です。ここから先は、私が1年やってみて掴んだ自分なりの捉え方、つまり公式見解の延長ではなく、一個人のスタイルとしての考え方です。

営業のときの私は、舞台に立つ「主役」として前に出て、自分の手で受注を取りに行く側でした。それに対してPMは、言うなれば舞台の成功に向けて表裏管理する「舞台監督」として関係者(顧客・エンジニア・営業)を動かして、一回一回の公演(プロジェクト)を成功させる側だと捉えています。

スキルそのものより、この立ち位置の切り替えこそが、PMになって最初に直面した一番大きな戸惑いで、この1年における最大の学びです。

そのまま効いた営業スキル

まずは、向きを変えるまでもなくPMでも武器になったスキルです。

  1. 課題のヒアリングと言語化

    営業で一番鍛えられたのは「相手が本当に困っていることを引き出して、言葉にする」力でした。PMでは、顧客の曖昧な要望を要件に翻訳する場面でそのまま効きます。

  2. ステークホルダーとの関係構築・期待値調整

    「この人は何を気にしているか」を読んで信頼を積む。営業の生命線でしたが、PMでは顧客・エンジニア・社内を横断して関係を保つ仕事になり、むしろ出番が増えました。特に期待値調整は、トラブルを未然に防ぐPMの肝です。

  3. 相手の意思決定の流れを読む力

    営業では「誰が決裁者で、どこで稟議が止まるか」を読みます。PMでも「この決定は誰の合意が要るか」を先回りで読む力として直結しました。

  4. 場の温度感の察知

    商談で培った「空気を読む」感覚は、会議運営でそのまま活きます。発言の少ない人の表情、合意したフリの違和感、こういった機微に気づけるかで、会議の質が変わります。

使い方を変えて効いた営業スキル

次に、そのままでは噛み合わず、「向き」を変えたら効いたスキルです。繰り返しますが、捨てたものは一つもありません。

  1. クロージング力 → 論点を決め切る力へ

    営業のクロージング(=最後にYesをもらうためのフェーズ)は、PMでそのまま使うと「巻き取りすぎ」になります。向きを変えて、「この会議で何を決めるか」を決め切る進行力に転用すると、ダラダラ会議が締まります。

  2. 成果へのこだわり → 「自分の成果」から「チーム全体の成果」へ

    営業では成果=自分の数字で、そこに全力でこだわっていました。この成果へのこだわり自体はPMでも強い武器のままです。変わったのは、こだわる「対象」です。自分一人で出す成果ではなく、チーム全体で出す成果へ。同じ熱量を、「自分ではなくチーム全体の成果に向け直す」。これが私にとって一番大きな「向きの変更」でした。

  3. 提案のストーリーづくり → 関係者の目線を揃える力へ

    営業では「相手に動いてもらうためのストーリー」を作って提案していました。PMでは、その力の向きを「顧客・エンジニア・社内が同じゴールを見るためのストーリー」に変えます。売るための物語が、関係者の目線を揃えて同じ方向へ進めるための物語になった、という感覚です。

比較表:営業での出し方 → PMでの活かし方

スキル営業での出し方PMでの活かし方
ヒアリング・言語化課題を引き出して提案に変える曖昧な要望を要件に翻訳する
関係構築・期待値調整決裁者との信頼づくり顧客・エンジニア・社内を横断して調整
意思決定の流れを読む決裁ルートを読む必要な合意を先回りで読む
場の温度感の察知商談の空気を読む会議の違和感に気づく
クロージング力受注を詰める会議で「決めること」を決め切る
成果へのこだわり自分の成果にこだわるチーム全体の成果にこだわる
提案のストーリーづくり相手を動かす提案の物語関係者の目線を揃える物語

自分のスキルをどう棚卸しするか

ここまでを、読者の方が自分に当てはめられる形に翻訳します。営業からPM・推進側を目指すなら、手持ちのスキルをこう棚卸ししてみてください。

  • 観点1:そのスキルは「自分が主役」前提か、「裏方」前提か
  • 観点2:主役前提のスキルは、向きを変えれば裏方でも効くか考える(捨てる必要はない)
  • 観点3:事実(やってきたこと)と、意見(効いた実感)を分けて書き出す

分類は「そのまま使う」「向きを変えて使う」の2つで十分です。「捨てる」は要りません。

適用できないケース:これはあくまで私の業界・組織(フルリモートの小規模コンサル)での1年の話です。業界や組織規模、扱う案件によって必要なスキルの比重は変わります。万能の正解ではなく、棚卸しの「型」として使ってもらえればと思います。

おわりに

最後に、なぜこの記事を書いたか。

1年前の私は「知識ゼロでPMになって大丈夫か」と不安でした。1年やってみてわかったのは、不安の正体は「スキルがないこと」ではなく、「これまでのスキルの使い所が変わること」だった、ということです。

営業で積み上げてきたものは、何一つ無駄になりません。出す場面と向きを変えるだけです。これから営業からPMへ進もうとしている方が、自分の経験を「資産」として棚卸しできるきっかけになれば嬉しいです。

とはいえ、これはあくまで1年時点の途中経過です。私自身まだまだ学びの最中で、来年振り返ったら違うことを書いているかもしれません。それでも、いま同じ入口に立つ方に少しでも渡せるものがあればと思い、書き残しておきます。

FAQ

Q. 営業経験はPMで本当に活きますか?

A. 活きます。特にヒアリング・関係構築・期待値調整はそのまま武器になります。

Q. 営業出身PMが最初に戸惑うことは?

A. 「自分が主役」から「舞台監督」への立ち位置の転換です。スキルより姿勢の切り替えが先でした。

Q. 営業のクロージング力はPMでも使えますか?

A. 使えます。ただし受注を詰める向きではなく、「会議で決めることを決め切る」進行力に向きを変えると効きます。

Q. 未経験からPMになるのに必要な準備は?

A. 専門知識のキャッチアップは当然必要ですが、それ以上に「これまでのスキルをどう転用するか」を棚卸ししておくと、立ち上がりが楽になります。


出典

  • PMI(米国プロジェクトマネジメント協会)"What is a Project?":https://www.pmi.org/about/what-is-a-project
  • PMBOK® Guide 第7版(PMI, 2021):プロジェクトおよびプロジェクトマネジメントの定義

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