こんにちは!PMのYukaです。
みなさんは、PMBOKという言葉を聞いたことはありますか。プロジェクトマネージャーの方やプロジェクトマネジメントを勉強されている方は、ほぼ100%聞いたことがあるかと思います。わたしも新米PMではありますが、業務を勉強するにあたりほぼ最初に手を伸ばしました。
PMBOKはプロジェクト業務の進め方についてまとめられたガイドブックです。プロジェクトマネジメントのガイドブックやフレームワークは色々ありますが、最もメジャーと言っても過言ではないかと思います。
初めて中身を開いたときの正直な感想は、「うわ、量多くて複雑でポイントおさえるの大変そう・・・」でした。堅苦しそうだし、聞き慣れない言葉は多いし、これ全部やるのか、できるようになるまで何年かかるんだろう、と。
でも、中を見てみると、印象は変わります。第7版のPMBOKは、ひとつの大きなかたまりではなく、いくつかの部分に分かれています。「価値実現システム」「12の原理・原則」「パフォーマンス領域」といった具合です。全部を一度に覚える必要はなく、ひとつずつ手をつけるだけでも意味があります。
しかもこれは、気の持ちようの話ではありません。PMBOKはそもそも、全部こなす「手順書」ではなく、「ガイド」として作られています。
わたしもまだ勉強中なので、これから学ぶ人と近い目線で、最初につまずきやすいところから順に見ていきます。なお、このシリーズは、現時点で広く使われている第7版をベースにします(最新は2025年に出た第8版です)。
「分厚くて難しそう」の正体
そもそも、なぜPMBOKはあれほど身構えさせるのか。
わたしが思う理由は、下記のふたつです。
- 単純にページ数が多くて、情報量に圧倒される
- 「体系的にまとまった知識」と聞くと、最初から最後まで通して覚えて、そのとおりに実行しないといけない気がする
わたしも、この2つで立ち止まりました。でも、どちらも少し誤解でした。分量が多いのは、幅広いプロジェクトに共通する知識を、土台としてまとめているからです。最初から全部を覚えて、丸ごと従う前提では作られていません。その「正体」を、順番に見ていきます。
そもそもPMBOKって何?
まず、言葉の意味をそろえておきます。PMBOK(ピンボック)とは、プロジェクトマネジメントの知識や「良いやり方」を体系的に整理した、世界で広く参照されているガイドです。
名称は「Project Management Body of Knowledge」の頭文字で、直訳すると「プロジェクトマネジメントの知識体系」になります。発行しているのは、アメリカのPMI(Project Management Institute)という団体です。PMBOKの役割は、大きく3つあります。
- 立場や業界が違っても話が通じるようにする「共通言語」を整えること
- 多くのプロジェクトで役に立つと広く認められてきた「良いやり方」の土台を示すこと
- 必要なときに参照できる「知識のまとまり」を提供すること
また、PMBOKは、PRINCE2 や P2M など数あるプロジェクトマネジメント体系のひとつでもあります。
「手順書」ではなく「ガイド」
PMBOKは、「この順番でこうやりなさい」と定める手順書ではありません。PMI自身も、PMBOKは方法論ではなくガイドである、という趣旨をガイド本体の中で繰り返し述べています(例:PMBOK Guide 第6版、PMI、2017年、1.2.5節)。すべてのプロジェクトに効く唯一の正解を示すのではなく、自分でプランを組み立てるための土台を与えるもの、という位置づけです。
では、手順書とガイドは何が違うのか。いちばんの違いは、「判断」がどこにあるかだと思っています。
- 手順書:判断は文書の中で完了している。書き手が決めてあるので、読む側の仕事は「そのとおりに従うこと」。外れたら間違いで、全部やれば完了がある
- ガイド:判断は読む側に残っている。文書がくれるのは選択肢や考慮点で、決めるのは自分。選んで使う前提なので、全部使わなくても間違いではない
PMBOKは後者です。載っているのは「多くの場合に役立つと認められてきた良いやり方」で、ガイドには「読了」や「完遂」という概念がありません。「これ全部やるの?何年かかるんだろう」という最初のあの圧は、手順書の読み方でガイドを開いていたから生まれたものでした。
だから、そのまま従うのではなく「合わせて使う」
では手順書ではないなら、どう使えばいいのか。答えは「自分のプロジェクトに合わせて、必要なところを選んで使う」です。状況に合わせて調整することを、PMBOKでは「テーラリング」と呼びます。
どのやり方を採用するかは、PMがチームと一緒に判断して決めるものだと、PMBOK自身が位置づけています。プロジェクトの規模も、扱うものも、進め方もさまざまだからです。
全部を同じように当てはめるのではなく、目の前のプロジェクトに合う部分を選んで使う。たとえば少人数で期間の短いプロジェクトなら、大がかりな管理のやり方をそのまま持ち込まず、必要な分だけ薄く使う、そんな使い方が前提になっています。
PMBOKには何が書いてある?
「選んで使う」といっても、まずは全体像を知っておくと安心です。最初に挙げた「情報量に圧倒される」への答えも、この全体像にあります。細かく暗記する必要はなく、「こういう構成なんだ」と眺めておくくらいで十分です。第7版のPMBOKは、おおまかに次のような部分に分かれています。
- 価値実現システム:プロジェクトを、組織の価値にどうつなげるかという全体の考え方
- 12の原理・原則:迷ったときに立ち返る、判断のよりどころ
- パフォーマンス領域:目を配る対象(ステークホルダー、チーム、計画、デリバリー、不確実性など)
- テーラリング:自分のプロジェクトに合わせて調整する考え方
- モデル・方法・作成物:実際に使える道具のカタログ
この分かれ方が見えると、気になった部分からひとつ開けばいいと分かります。それが、実際に使うときの入り口になります。ちなみにわたしは「まずは基礎から」と思い、12の原理・原則から読み始めました。各パートの中身は、この記事だけで語りきると細かくなりすぎるので、別の記事で順に見ていきます。
まとめ:全部やらなくていい、一つずつでいい
最後に、この記事の要点を3つにまとめます。
- PMBOKは「そのとおりに従う手順書」ではなく「ガイド」であること。これはPMI自身が言っていること
- だから丸暗記して従うのではなく、自分のプロジェクトに合わせて選んで使う(テーラリング)ものであること
- 中身はいくつかの部分に分かれていて、全部いっぺんではなく、ひとつずつ手をつけるだけでも意味があること
「これ全部やるのか」で止まってしまうと、もったいない。全部を覚えて従う必要はなく、合う部分から、少しずつ。まずは気になる一つ目を開く。わたしは12の原理・原則からでした。それが、PMBOKとの付き合い方だと思います。
ちなみに、ほかの体系との違いや全体の中での位置づけは、以前わたしが書いた5つのフレームワークを整理した記事でまとめています。
よくある質問
PMBOKは全部覚えないとダメですか?
いいえ。PMI自身が、PMBOKは方法論ではなくガイドだと位置づけています。丸暗記してそのとおりに従うものではなく、いくつかの部分に分かれた土台を、自分の現場に合わせて少しずつ使うものです。わたしは12の原理・原則から勉強しています。