手順書にまつわるあるある。これも情シスの仕事ですか?

Miho Ogawa
Miho Ogawa

マーケティング担当

毎日のお仕事がちょっと軽くなるヒントをお届けするこのコラム。
今回は、情シスのお仕事にいつもついて回る「手順書(マニュアル)」のあるあるをお話しします。


「手順書は作った。共有もした。それなのに、なぜか毎回聞かれる」
情シスの現場では、そんな場面がよくあると聞きます。

「場所が分からない」と言われる。案内すれば「画面が違う」と言われる。
読んでもらえたと思ったら、途中で判断に迷ったのか、結局いつもの詳しい人へ質問が飛んでいく。

手順書はあるのに、そのとおりに運用が進まない。
これは、読まない人が悪いのでしょうか。
それとも、書き方が悪いのでしょうか。

今回は、情シスで起こりがちな「あるのに使われない」場面に加えて、作成や管理まで情シスに集まりがちな状況を、あるあるとして並べてみます。
読みながら、「これ、うちでも起きている」と思うものがあるか、ぜひ確認してみてください。

あるある1:手順書の場所を聞かれるところから始まる

「アカウント申請の手順書はどこですか?」

情シスからすると、「前にも案内したのに」と思うかもしれません。けれど、利用者からすると、手順書が置かれている場所は、情シスが思っているほど「当たり前」ではありません。共有ドライブ、社内ポータル、チャットのピン留め、Wiki。ツールや置き場所が増えるほど、手順書を探す手間がかかります。

この場合、問題は「手順書を読まないこと」ではなく、必要なときに手順書へたどり着けないことです。
まずは次の状態になっているか確認したいところです。

  • どこを見ればよいか、誰に聞いても同じ答えになる
  • 手順書の名前に、何の作業に使うものかが書かれている
  • 社内ポータルや申請フォームなど、作業の入口からリンクされている

あるある2:「最新版」が何個もある

ファイル名に「最新版」「最終版」「最終版2」「2026年更新版」などが並んでいる。

利用者はまず一番上に表示されたものを開くことでしょう。作業を進めている途中で「この内容は古い」と気づくことがあります。

これも、利用者が雑に扱っているというより、ファイル名でバージョン管理をしていることが原因です。コピーで版を重ねるほど古い版が残り続け、正しい手順書を選ぶ判断が利用者に委ねられていきます。

手順書の内容以前に、正本を一つに決めて、バージョン管理をファイル名から切り離すことが大切です。

  • 正式な手順書へのリンクを一つにする
  • ファイルをコピーして配布するのではなく、同じ場所を参照してもらう
  • いつ・誰が・何を変えたかは、ファイル名ではなく更新履歴で分かるようにする

「最新版を選んで使ってください」ではなく、「これを使ってください」と一つのファイルをピンポイントで指し示せる状態が理想です。

あるある3:手順の前提条件が書かれていない

手順書には「管理画面を開く」「設定を変更する」と書いてある。でも、その画面を開く権限がない。あるいは、先に別の申請を済ませておく必要がある。手順を書いた人にとっては、そこまでが当然の前提です。しかし、初めて作業する人にとっては、その前提こそが分かりません。

手順書を読む人が最初に知りたいのは、操作方法だけではありません。

  • この作業は誰ができるのか
  • 作業の前に何を準備するのか
  • どこまで進めば完了なのか
  • 途中で止まった場合、何を確認するのか

これらが書かれていないと、手順書は「途中までしか進めない文書」になってしまいます。

あるある4:書いてあるとおりに進めたのに、画面が違う

「手順書の画面と、自分の画面が違います」

クラウドサービスや業務ツールでは、権限、契約プラン、デバイスやブラウザなどの利用環境、アップデートの影響で表示が変わることがあります。手順書を作ったときには正しかった内容が、しばらくするとそのまま使えなくなることもあります。

ここで大切なのは、画面のスクリーンショットを増やし続けることだけではありません。

  • どの画面を開くかを、メニュー名やURLでも書く
  • 画面が違う場合に確認する条件を示す
  • 手順書の更新日を記載する
  • 画面変更があったときに、誰が見直すかを決める

手順書は、一度作れば終わるものではありません。使われる環境が変われば、見直しが必要な運用の一部です。

あるある5:例外が出た瞬間、手順書が読まれなくなる

手順書どおりに進めているのに、想定と違うメッセージが表示される。対象者が通常の条件に当てはまらない。急いでいるので、今回だけ別の方法を使いたい。

こうなると、利用者は手順書を閉じて詳しい人を探します。

これは「手順書が役に立たない」というより、手順書が通常ケースだけを扱っていて、判断が必要な場面の行き先を示していない状態です。

すべての例外を手順書に書く必要はありません。まずは、次のような分岐があるだけでも、利用者は動きやすくなります。

  • この条件に当てはまらない場合は、作業を止める
  • エラーメッセージを記録する
  • 申請番号や対象者の情報を添えて問い合わせる
  • 緊急の場合は、通常手順ではなく別の連絡先へ相談する

例外をなくすのではなく、例外が起きたときに迷子にならないようにする。これも手順書の役割です。

あるある6:手順書より、詳しい人に聞いたほうが早い

「手順書を読むより、○○さんに聞いたほうが早い」

この状態になると、短期的には作業が進みます。けれど、質問される人は同じ説明を何度もすることになります。その人が休んでいたり、異動したりすると、途端に作業が止まります。

ここで見えてくるのは、詳しい人への依存という属人化の問題です。

とはいえ、「手順書を読んでください」と言うだけでは、状況は変わりません。なぜなら、手順書に書かれていない判断や、書いてあっても見つけにくい情報をその人が補っているからです。

質問が繰り返されるなら、質問の内容を責めるのではなく、手順書に次の情報を戻してみます。

  • どこで迷ったのか
  • 何を判断できなかったのか
  • どの前提が抜けていたのか
  • どんな言葉なら初めての人にも伝わるのか

質問は、手順書の改善点を教えてくれる材料でもあります。

あるある7:手順書どおりにやる人と、自分のやり方でやる人がいる

同じ作業なのに、人によって進め方が違う。仕上がりだけ見れば問題なさそうでも、途中で何を確認したか、どこに記録を残したかは人それぞれ。だからトラブルが起きたときに、誰がいつどの手順で作業したのかをたどれません。

こちらは、担当者によって手順や記録の残し方が揃わないという統一の問題です。

この状態では、「手順書を守ってください」と呼びかけるだけでは、運用は揃いません。

手順書に書かれていることの中には、必ず守ってほしい手順と、状況に応じて選べる方法が混ざっていることがあります。そこが分からないと、利用者は自分にとってやりやすい方法を選びます。

手順書を見直すときは、次の2つを分けて書くと伝わりやすくなります。

  • ここは必ず守る、というルール
  • 条件に応じて選べる、という推奨事項

そして、なぜその手順が必要なのかも短く添えます。「記録を残すため」「必要以上に強い権限を与えないため」「後から確認できるようにするため」など。理由とその作業の重要性が分かれば、単なる面倒な作業として受け取られにくくなります。

あるある8:手順書を作るのも、更新するのも、情シスになっている

「この業務の手順書を作っておいてください」

「現場のやり方が変わったので、手順書も更新しておいてください」

「古い手順書が残っているので、情シスで整理しておいてください」

気がつくと、手順書の作成、更新、保管、問い合わせ対応まで、情シスが引き受けている。これも、よくある状態ではないでしょうか。

ここで問題になるのは、手順書に関する責任分担の問題です。

情シスが手順書の整備を支援すること自体は、悪いことではありません。ただ、その業務の内容を決める現場部署と、手順書を管理する担当が同じとは限りません。現場部署の業務が変わっても、情シスが知らなければ手順書は更新できないからです。

次のような状態になっている場合は、手順書の問題というより、手順書のオーナーが決まっていないことが原因です。

  • 業務の内容を一番よく知っている現場部署が、手順書の内容を確認していない
  • 更新が必要になったことを、誰が情シスへ伝えるのか決まっていない
  • 手順書の内容に誤りがあったとき、誰が判断するのか分からない
  • 情シスが作成した手順書を、現場部署が確認・承認する流れがない
  • 手順書の更新時期や見直しのきっかけが決まっていない

手順書を使える状態にするには、情シスだけが頑張るのではなく、現場部署と役割を分けることが大切です。たとえば、業務の内容や判断は現場部署が持ち、情シスはテンプレート、保管場所、権限設定、更新の仕組みを支援する、といった分担です。

手順書のオーナーは誰か ― 現場部署と情シスの役割分担(例)
手順書のオーナーは誰か ― 現場部署と情シスの役割分担(例)

「手順書を作るのは誰か」だけでなく、次の問いも一緒に確認してみると、役割の曖昧さが見えやすくなります。

  • この手順書の内容を最終的に判断するのは誰か
  • 業務が変わったことを、誰が更新担当へ知らせるのか
  • 更新された内容を、誰が確認して公開するのか
  • 手順書を使う人からの質問や改善案を、誰が受け取るのか

手順書を情シスだけの成果物にしないこと。これも、手順書を運用に定着させるための大事なポイントです。

手順書が使われないときに、まず確認したいこと

ここまでのあるあるに共通しているのは、「手順書の内容だけが問題なのではない」ということです。

手順書が使われないときは、次の問いから確認してみてください。

  • その手順書を使う人は、どのタイミングで困るのか
  • その人は、手順書の存在と場所を知っているか
  • 作業を始める前に必要な情報が揃っているか
  • 手順書だけで完了まで進められるか
  • 迷ったときや例外が起きたときの行き先があるか
  • 手順書の内容を見直す担当者とタイミングが決まっているか
  • 手順書を使った人から、改善点を受け取る方法があるか
手順書が使われないとき、まず確認したい7つの問い
手順書が使われないとき、まず確認したい7つの問い

すべてを一度に直す必要はありません。まずは、問い合わせが繰り返されている手順を一つ選び、「どこで止まっているのか」を見てみるのがおすすめです。

手順書は、作業の説明書ではなく、運用を揃えるための道具

手順書を作るとき、正しい操作方法を細かく書くことに意識が向きがちです。もちろん、それは大切です。

ただ、手順書を使う人が知りたいのは、それだけではありません。

  • 自分がこの作業をしてよいのか
  • 何を準備すればよいのか
  • 誤った操作をどう取り消せばよいのか
  • 迷ったときに誰へ聞けばよいのか

そこまで分かって、初めて手順書は使えるものになります。

手順書があるのに運用が揃わないときは、「読んでいない人がいる」と考える前に、次の見方をしてみてもよさそうです。

手順書だけでは、判断できない状態になっていないか。

この問いを持つだけでも、手順書の置き場所、前提条件、例外時の対応、更新の責任者など、見直す場所が変わってきます。

手順書の整理だけでは解決しない場合は、手順書が必要になる業務そのものや、申請・権限・問い合わせの流れを見直す必要があるかもしれません。まずは、繰り返し質問されている手順を一つ選んで、先ほどの7つの問いに当てはめてみてはいかがでしょうか。

手順書の悩みは、日々の業務に紛れてしまい、あらためて誰かに相談するような話題にはなりにくいものです。だからこそ、この記事がセルフチェックのきっかけになればうれしいです。

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