SaaS コラム

iPaaSどれがええの?

はじめに

どうも、たにあんです。運用支援チーム Advent Calendar7日目です。
Cloudnative IRS Advent Calendar 2025 – Adventar

今回は以下のiPaaS製品をざっくり触ってみたので比較していきたいと思います。

  • make
  • Workato
  • Zapier
  • Power Automate
  • n8n

私はmakeに一番慣れているため、makeを軸に比較している点だけご承知おきください。
また、自動化の作りやすさという観点でUIや機能を比較していきたいと思います。

注意

2025年12月時点での情報です。
最新の情報については各サービスのドキュメントなどをご確認ください。

結論

n8nmakeのどちらかを選ぶとよいと思います。

まとめ

各サービスを実際に触ってみたうえで簡単にコメントを記載しておきます。
あくまで私の独断と偏見の評価です。

機能Power AutomateWorkatomakeZapiern8n
たにあん的
オススメ企業
ガッツリMicrosoft製品を使っていて安価に済ませたい企業エンタープライズ向けで様々な機能が欲しい企業外部サービスのAPIドキュメントを見ながら自動化を作れる企業ITにあまり詳しくない方
複雑なデータの処理を行わない企業
iPaaSわからんけどとりあえず触ってみたい企業
アプリ数1,000+ 1,000+2,000+8,000+1,000+
トリガー
ストレージ(データテーブル)
Dataverseが必要
条件分岐
今後のUpdateで改善見込みあり
エラーハンドリング
Moduleごとに設定が必要

Stepごとに設定が必要
コメント機能
Sticky Noteで記述可
Webhook Custom Response
コード
Office スクリプト

Ruby

JavaScript / Python

JavaScript / Python

JavaScript / Python
自動化のオートセーブ
ドラフトが作成される
AIの自動化(MCP含む)
カスタムアクションを使えば可
日本語UI
自動化の親子関係
セルフホスト
AI機能
他のAIと比べると使えそうというレベル

以降で各製品に関するコメントをざっくばらんに記載しておきます。

Power Automate

全体的な評価・推奨対象

  • 世界中で何度言われてるか分かりませんが、Microsoft 製品をよく使っているのであれば、使ってもいいかもしれないというレベルです。
    • 基本的にはPower Automateを主軸にして自動化を作ろうというのは思わないです。
    • Desktop版もあるのでMicrosoft 製品で固められているのであれば選択肢に入ってくるかもしれないです。

インターフェース・使いやすさ

  • アクションの検索性が著しく悪いです。Copilotがなかった時代だったら本当に触りたくないなと思ってしまうくらいには悪いです。
  • 設定がやたらと分かりにくい上に、設定に失敗しているとフローの保存ができないのが地味に苦しいです。
    • エラーが出た!と思いきや到底人間が読むことを想定しているとは思えないエラーが返ってくることもあるので困ったもんです。
    • makeだと無理やり保存できたりするので、後から修正ができたりします。

機能・特徴

  • アクションの数が限られています。
    • 例えば、Anthropic APIのアクションがないとかSlackのTriggerも激弱なので、この大SaaS時代に誰が使うん?って感じです。
    • カスタムアクションを独自に作ったり、有志で作成してくれているものを使ったり…ということが必要になります。

Workato

全体的な評価・推奨対象

  • 機能の多さはピカイチ。
    • エラーハンドリングも比較的らくらく。
  • エンタープライズ向けで様々な機能が欲しい企業にオススメ。

インターフェース・使いやすさ

  • インターフェースはZapierと似たり寄ったりで、使いやすいかと言われると正直いまいち。
  • 処理はプログラミングライクでmakeほどの癖がなく、ITに対してある程度の理解があれば直感的でわかりやすいと思います。

その他

n8n

全体的な評価・推奨対象

  • 困ったらn8nでOK
    • iPaaSで製品を選ぶとしたらとりあえずn8nは候補に入れて良いと思います。

インターフェース・使いやすさ

  • インターフェースの優秀さがmakeと同等で、各ステップの設定方法もmakeとかなり近い印象。
  • 動作が軽い。
    • makeはModuleの設定値や実行結果の読み込みがもっさりしていることが多いです。

機能・特徴

  • SlackやSalesforceなどのトリガーも充実してます。
  • Execution HistoryでNode毎のI/Oや設定を一つの画面で確認できるのがかなり嬉しいです。Input → Settings → Outputの横並びでわかりやすいです。
n8nの画面
  • 有志によってテンプレートが公開されており、自動化を作るうえで参考になるものも多少存在する様子。
    • makeの場合、Moduleが2~3つ配置されているレベルのテンプレートしかなく、あまり参考にはならないです。
  • セルフホストも存在するので、セキュリティ面やコストなどその他の細かい要件を総合的に考慮する必要がありそうです。

エラーハンドリング

  • Error Trigger というNodeがあり、それを使用した自動化を作成しておくことで、他の自動化で失敗した際にError Trigger Nodeを使った自動化を呼び出せる機能があります。
    • makeにも取り入れてほしい機能、堂々の第1位です。

AI機能

  • n8n AIに自動化作成を依頼したのち、あとは「この設定が完了したら自動化をActiveにできるよ」といった提案も勝手にしてくれて、ファーストインプレッションが最高。
    • ただ、過度な期待は禁物で、他iPaaSのAIと比べると使えそうという感触。

ドキュメント・外部連携

  • 外部サービス連携のドキュメントの記述が乏しいです。このあたりは他のiPaaSと同じ。

make

全体的な評価・推奨対象

  • 使い方はn8nと近い感触があり、iPaaSを選ぶならmakeかn8nどちらかになると思われる。外部サービスのAPIドキュメントを見ながら自動化を作れる企業にオススメ。

インターフェース・使いやすさ

  • 使いやすく、分かりやすいので自動化を作りやすい。
    • makeはこれからのUpdateで期待する部分が多いことは事実ですが、自動化の作りやすさという点では他のiPaaSより優れていると思います。
    • n8nも同等。

機能・特徴

  • makeの独自のデータ単位や仕様により癖はあるが、理解できると基本的に何でも実装できます。
    • 社内でも、仕様理解で躓くことはあってもスクリプトを動かさないとどうにもならないという処理は限られています。

エラーハンドリング

  • Moduleごとに設定が必要で、設定するのがかなり大変。
    • 最もmakeに改善してほしいポイントでもあります。

ドキュメント・外部連携

  • make関連のドキュメントにおいて、外部サービスのModuleの使い方に関する記載が乏しいです。
    • 特にどのようなフォーマットでデータを渡せばよいかドキュメントに書かれていないことが多く、外部サービスに対してなにかリクエストを送る際、対象サービスのAPI Referenceを見ることがほぼ必須になってきます。
    • 恐らく、外部サービスは毎月30件以上が追加されています。ドキュメント整備が追いつかないのではないかと思います。
      • 他のiPaaSでも同じ状態だと思うので、ある程度サービスのAPI Referenceを見ることは前提にあると思います。

Zapier

全体的な評価・推奨対象

  • ITにあまり詳しくない方、複雑なデータの処理を行わない企業にオススメ。

インターフェース・使いやすさ

  • makeと同様にStep単体のテストがしっかりしており、失敗した理由もAIで修正方法を提案してくれるので、やはり非IT部門の方々が触るには良心的な設計かと思います。
    • テストは可能だが、他のStepから指定している値を参考にして実施するので、任意の値を入力することはできない。
  • 前Stepのパラメーターを利用する場合、StepのTestが完了しなければパラメーターを指定できない。
    • Stepを一つずつTestしていく必要があるのが、優しさがある反面、煩わしさに繋がっている感触も強い。
  • 日本語の入力に難があります(海外SaaSあるある)。
    • Enter1回で入力した内容が送信されてしまう。
    • 入力した内容が重複する、あるいは消える。

機能・特徴

  • WebhookのCustom Responseに対応してないです。
    • もしかしたら実装する方法があるかも知れませんが、数時間ほど触った限りだとわかりませんでした。
    • 外部サービスのトリガーがいくつか用意されているので、それらを使う形になります。
  • 自動化のオートセーブ機能があり、ドラフトが作成される。
  • Stepの一括コピーはできない模様。
  • Formatterの取り扱いにクセがあり、設定が大変です。
    • データを整形したり、加工したり…ということが発生すると途端に使いにくくなるので、万人受けしつつもITに詳しい人間からするとZapierは…という印象があります。
    • makeにもクセはあるので、この辺りは好みの範疇だとは思います。
  • Zapierでできることがアクションとして固定化されていたり、設定不備に対して都度AIがトラブルシュートしてくれるといったやさしさもあり、Zapierは比較的万人受けしやすい作りではあるように感じます。

コラム: difyはどうなん?

difyをiPaaSという括りで語るのは適切ではないのですが、現状のAIの潮流を鑑みると避けては通れないと思うので触れておきます。

まず、iPaaS製品とはそもそも目的が異なり、Agentic AIに全振りしている製品であるので、誰でもぜんぶ自動化できる!という製品ではないです。
外部サービスとの連携にはプラグインもしくはHTTPリクエストのノードを使うことになります。プラグインで用意されているものも限定的で、特定のAPIエンドポイントしか使えないということもあり、基本的にiPaaSという括りではないです。

difyとiPaaSは区別して実現したいことに対して役割分担させる必要があると思います。

  • dify:AIを主軸に複雑な業務を楽にしたい。
  • iPaaS:定常的な業務を簡単に自動化したい。

一方で、AIの連携も必要だと思いますので、difyもiPaaSも境界が曖昧になるかもしれないと思いつつ、difyのアップデートの方向性を見るとiPaaSにはない機能が実装されているので、今後の動きにも注目かもしれません。

おわりに

いかがだったでしょうか。

私が情シスとしてiPaaSを導入するとなった場合は、やはり使いやすさの観点でn8nもしくはmakeを選びます。正直、大抵の企業ではn8nでよいのでは?と思うくらい使い勝手がよかったです。

n8nとmakeならどっち?と言われると難しいですが、コストやセキュリティ面など、本記事では触れていない要素もあるので要件を決めて、どちらかを選ぶということになると思います。

参考

  1. Zapier
  2. make
  3. Workato
  4. Power Automate
  5. n8n
  6. Zapier – Data storage solutions for your workflows
  7. Zapier – Set up custom error handling
  8. n8n Docs – Error handling
  9. n8n Docs – Error trigger node

たにあん

2024年12月運用支援サービス(仮)のメンバーとして入社。
とりあえずやってみるをモットーにおしごとをしています。
好きなものは甘いもの。
嫌いなものは甘いものを食べていない時間。