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社内ポータルでAI検索を活用する「Box Hubs/Box AI for Hubs」を触ってみた

セキュリティチームのぐっちーです。2024年5月16日、Box上で社内ポータルを作ることができる Box Hubsと、そのHubの中のコンテンツを元にAIが質問に回答してくれるBox AI for Hubs がベータ版として提供開始しました。早速、社内で試してみたので、簡単にレビューしたいと思います。

補足
  • 本ブログは2024年5月17日時点での情報を元に執筆しています。
  • 本機能はベータ版としての提供です。
  • Box Hubs は Enterprise 以上のライセンスが必要です。
  • Box AI for Hubs は Enterprise Plus のライセンスが必要です。

Box Hubs/Box AI for Hubsとは?

Box Hubsとは、企業のコンテンツを全社で安全に整理し、社内ポータルを作成するための機能です。Box 上の様々なコンテンツを埋め込むことで、Box にコンテンツを集約することの恩恵を受けつつ、情報を整理できる点がポイントです。個人的に、Box は最強のコンテンツ管理プラットフォームだと考えていますが、最強サービスにも弱点があり、ポータル的な機能や検索性には課題があると考えています。そのような課題を解消できるのではという期待から、多くの注目が集まっていた機能でした。1

一方、Box AI for Hubs は、Box Hub内の複数のファイルに対する質問を送信できる機能です。現時点では、Enterprise Plusアカウントでのみ使用できます。ちなみにAI機能がない Box Hubs 事態は Enterprise でも使えるので、間違えやすい点には注意してください。この機能を使用すると、Box Hubs の中に設置した複数のファイルを参考にして、AIが回答を生成してくれます。2

設定方法

初期設定

Box Hubs を利用するには管理者による有効化が必要です。管理コンソールで数分あれば設定できるボリューム感ですが、設定手順については、Boxさんが出しているドキュメントを参照ください。

また、Enterprise Plusプランを契約しており、Box AI for Hubs を利用したい場合は別途、[管理コンソール] > [Enterprise設定] > [Box AI] から、Box AI for Habs を有効化する必要があります。

Hub の作成

Hub の作成については、ノーコードで全て完結するというのが大きな特徴です。管理者によってHubの作成を許可されたユーザーは、左のタブからHubにアクセスし、新しいHubを作成できます。

Hubが作成されたら中身のコンテンツを作成しますが、「ファイルとフォルダ」でBox上のコンテンツを追加したり、段落などを使ってテキストを埋め込んだりすることで、ポータルを作成できます。ちなみに、Box上の全てのコンテンツが埋め込みに利用できるわけではなく、自らが編集権限を持っているなど、いくつかの条件がある点には注意してください。

ユーザー体験(個人の感想ベース)

Hub(ポータル)の閲覧体験

Box Hubs で作るポータルは非常にシンプルなものです。基本的にはアウトラインと文字列、Box上のファイルを主たる要素として作っていく形なので、コンテンツが混み合ったりするようなことはありません。どんなものなのか、イメージがわかりやすいように、私が10分で作った社内ポータルを下記に共有します。

現時点では、Hubを構成する上でのパーツ(ブロック)の種類があまり多くなく、自由度はそこまで高くはありません。

検索体験

Box Hubs にはHub内のコンテンツを検索できる検索窓が用意されています。個人的にはBoxの通常の検索と比べて、この検索窓はレスポンスが速いように感じ、検索体験は良いと感じました。テナント全体を検索する通常の検索と比べて、少ない範囲でファイルを探しているという点が大きく起因していると思います。

また、検索の際のフィルター画面のUIも個人的には良いなと感じており、従来のBox検索フィルターと比べてかなり操作しやすいなと感じました。

注意

コンテンツを埋め込んでから、検索結果に表示されるようになるまで、多少のタイムラグがありました。(体感値で10分程度です。)

Box AI への質問体験(Enterprise Plus のみ)

また、Enterprise Plusライセンスの場合、 Box Hubs にコンテンツを埋め込むと、今回埋め込んだコンテンツに対しての質問をAIに対してすることができます。右上に[Box AI]ボタンがあるのでそちらをクリックして起動し、質問を投げかけます。

このポータルには「Azure OpenAIを使ったサービス構築_株式会社クラウドネイティブ_田口大智」という過去の登壇資料を埋め込んでいたのですが、その登壇資料を元に回答してくれました。
注意

コンテンツを埋め込んでから、AIが情報を参照してくれるようになるまで、かなりのタイムラグがありました。また、裏側のモデルのスペックは公開はされていないですが、おそらく gpt-3.5 相当のレベルのモデルを使っているという感覚です。(あくまで個人の感覚なので注意してください。)普段、Azure OpenAI や AI Search を触っている感覚からすると、検索の精度もその後の生成の精度も特に日本語では改善の余地があるように思っていますが、SaaSはベンダーが頑張って改善してくれると思うので、長い目で見ながら応援したいと思います。

Box Hubs の注意点と安全に使うための方法案

Box Hubs を利用している中で気になったのは、Box Hubs に埋め込んだコンテンツは、ファイルにアクセス権がなくても、当該Box Hubs にアクセス権のあるユーザーにView権限でみれてしまうという点です。

例えば、添付の図の左側のようにUser2がファイル側にアクセス権がない状態だとします。そこで、User2がアクセス権のないファイルを、User2がアクセスのあるHubに埋め込んでしまうと、閲覧ができてしまいます。

とはいえ、Hubに掲載するということは、そのHubのユーザーに伝達することを想定してHubに乗っけるのであって、そこまでクリティカルな問題ではないとは考えています。大事なのは特性を理解して利用することだと思います。しかしながら、超稀に社内で共有してはいけなかった資料が見えてしまうというミスも発生し得るので、社内アクセス権限をガチガチに縛りたい企業は以下のような運用を回す形となるかと思います。

  1. 「Box Hubs に埋め込むコンテンツ=当該Hubに招待するユーザーが既にアクセス権のあるコンテンツ」にするよう周知徹底する
  2. [1]の実効性を高めるために、Box Hubを作成・編集する権限を限られたメンバーだけとする
補足

現時点では、外部テナントに所属するユーザーは、Box Hubs に招待することはできない仕様となっているため、この注意点はあくまで社内共有を想定した注意点です。3 また、ベータ版での提供ということもあり、仕様変更の可能性には留意してご利用ください。

想定されるユースケース

基本的には社内ポータルとしての利用となるかと思いますが、ざっと以下のようなユースケースが想定されると思います。この辺はまだ使い始めて1日なので、他のケースがないか探ってみたいと思います。

  • コーポレート部門が用意する社内全体のポータルとして利用する
  • コンサルティングプロジェクトの情報をまとめておく
  • エンジニア等の専門職種のナレッジマネジメント
  • 部門内の手順書等をまとめておく

おわりに

ポータルの作成については、簡単にシンプルなポータルを作れる点が好感触でした。一方で、AIの精度はまだまだ改善の余地がある(ポテンシャルがある)のようにも感じます。AIのモデルでGPT-4oやtext-embedding-3-large、Claude Opus等の最新のモデルが利用されるようになると、より強力なポータル機能に成長していきそうとも感じます。まだ、登場して1日ということで、今後の進化に期待しつつ、刺さるユースケースを探っていきたいと思います。

  1. Box Hubs <ベータ版> – Box Support ↩︎
  2. Box Hubs 〜 コンテンツのパブリッシングをシンプルな方法で | BoxSquare ↩︎
  3. Box Hubsの既知の問題と制限事項 – Box Support ↩︎

ぐっちー

コンサル会社にてISO27017やISMAP等のセキュリティ規格案件を経験した後、クラティブに転職。趣味はダンス(Soul, Lock, Waack)です。