ごきげんよう、IDチームのわかなです!
これまで、Active Directory(AD)からEntra IDへ同期しているユーザーやグループは、「ADがマスタ」であるため、Entra ID側では属性の編集やメンバーの追加ができませんでした。ユーザー情報をちょっと直したいだけなのに、わざわざADサーバーに入って変更して同期を待つという手間になっていました。
しかし!ついにその常識を覆す「Source of Authority(SOA)」という機能がパブリックプレビューになりました!
今回はこのSOAを使って、「AD同期オブジェクトの管理権限をEntra IDに移譲し、Entra ID側で編集できるようにする」検証をやってみました。
Source of Authority(SOA)とは?
Source of Authority(SOA)は、オブジェクトのマスタがどこにあるかを定義する概念です。
これまでは、Entra Connect等で同期されたオブジェクトのSOAは常に「AD」でした。そのため、Entra ID側はRead-only(読み取り専用)となっていました。
今回リリースされた機能を使うと、同期関係を維持したまま、特定のユーザーやグループのSOAを「Entra ID」に変更することができます。
SOAを変更するメリット
- 脱ADの加速: ADを完全に廃止する前段階として、少しずつ管理をEntra IDへ移行できる。
- 運用の柔軟性向上: Entra ID側で即座に設定変更が可能になる。
- クラウドファーストなID管理: ADを「ソース」として扱い、管理の実態をEntra IDに集約できる。
1. 検証の前提:ADでの準備
今回は検証環境として、以下の準備を行いました。
- AWS EC2 Windows Server 2022で立てた検証用Active Directory
- Entra Connect(ADフォレストとEntra IDを同期済み)
まずは、従来通りAD側で検証用のユーザーとグループを作成します。
ADでユーザー作成
検証用ユーザーを作成します。

ADでグループ作成
次に、検証用セキュリティグループを作成し、先ほどのユーザーをメンバーに追加します。


この状態で Entra Connect による同期が完了するのを待ちます。
2. 同期直後の状態確認(SOA変更前)
同期が完了後、Entra ID管理センターで状態を確認します。
グループの状態
先ほどADで作成したグループを確認すると、ソースが「Windows Server AD」になっています。

当然ながら、Entra ID側でメンバーを追加しようとしても、ボタンがグレーアウトしており操作できません。

ユーザーの状態
ユーザーも同様に確認します。プロパティを見ると「オンプレミスの同期が有効:はい」となっており、AD管理であることがわかります。


「ジョブ情報」などの属性を編集しようとしても、編集ボタンが表示されず、全てグレーアウトしています。

3. グループのSOAを変更してみる
ここからがいよいよ本題です!
この同期されたグループのSOA(管理権限)をEntra ID側に移します。
現時点(プレビュー段階)では、Microsoft Graph APIを使用して設定を変更するのが確実です。Graph Explorerを使って操作します。
現状の確認(GET)
まずは対象グループの現在の設定を確認します。
onPremisesSyncBehaviorという設定値を確認すると、isCloudManagedがfalseになっています。(※AD管理状態)
https://graph.microsoft.com/v1.0/groups/{オブジェクトID}/onPremisesSyncBehavior

SOAの変更(PATCH)
isCloudManagedを値をtrueに変更することで、管理権限をクラウドへ移譲します。
https://graph.microsoft.com/v1.0/groups/{オブジェクトID}/onPremisesSyncBehavior
{
"isCloudManaged": true
}

ステータス204 No Contentが返ってくれば成功です。
Entra IDで編集可能に
設定変更後、Entra ID管理センターをリロードして確認すると、これまでグレーアウトしていた「メンバーの追加」ボタンが有効化されました!


これで、AD側での操作なしに、Entra ID上で直接ユーザーをグループメンバーに追加したり、削除したりすることが可能になりました。
4. ユーザーのSOAも変更してみる
ユーザーについても仕組みは同様です。
usersエンドポイントに対してonPremisesSyncBehaviorを操作します。(※現在のAPIはBeta版です)
https://graph.microsoft.com/beta/users/{オブジェクトID}/onPremisesSyncBehavior
{
"isCloudManaged": true
}

これを実行することで、先ほどグレーアウトしていた「ジョブ情報」などの属性フィールドが編集可能になります。


これにより、Entra ID側で修正を行えるようになりました!
まとめ
今回はパブリックプレビューとなったSource of Authority(SOA)機能を検証しました。
isCloudManagedをtrueにすることで、同期を維持しつつEntra IDで編集可能になるtrueのユーザー/グループはADからの属性更新はAD側に反映されなくなる
まだプレビュー段階ですので、本番環境への適用は慎重に行う必要がありますが、AD移行の敷居がぐっと下がる機能と思いました。
引き続きアップデートをウォッチしていこうと思います!

