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Google版 Copilot「Duet AI for Google Workspace」を検証してみた

セキュリティチームの ぐっちー です。Microsoft 365 Copilotのライバルとなるであろう存在である「Duet(デュエット) AI for Google Workspace」が使えるようになったので軽く検証してみました。まだ英語しか使えませんが、できることを絞りつつ、すばやくリリースしてきたような印象を受けています。本日は概要のみを紹介し、具体的なユースケースや活用方法は別途記事にしたいと思っています。

ご注意
  • 本機能を利用するには「Duet AI for Google Workspace」のアドオンライセンスが必要です。
  • 現時点では日本語には対応していません。
  • 本ブログの内容は、2023年9月4日時点までの情報を元に作成しておりますが、クラウドサービスの仕様変更等に伴い、将来的に状況が変化することがございます。仕様変更が確認できた場合は可能な限り修正をしますが、最新の情報を常に維持することは難しい点についてはご了承ください。

Duet AI for Google Workspaceとは

「Duet AI in Google Workspace」とは、Google ドキュメント、Google スプレッドシート、Google スライドといったGoogle Workspaceの各アプリに組み込まれた生成AIです。この機能を使えば、文章生成、データ整理、プレゼンテーション作成などのタスクをAIのサポートにより効率的に行えるようになります。

参考情報

類似サービスとして「Duet AI for Google Cloud」というサービスもありますが、そちらはBigQueryやCloud Spanner等のGoogle Cloud Platform向けのサービスであり、別製品・別ライセンスのためご注意ください。1

基本モデル

「Duet AI in Google Workspace」に搭載されているAIは、Google社が独自に開発したモデルを利用しており、大きく「文章生成」と「画像生成」という2つの機能が備わっています。今のところ、この基本モデルを自社向けにカスタマイズ(Fine-tuning等)したりするなどの機能は提供されていません。

対応アプリとできることの概要

アプリ名できることの概要
Gmailメール返信の下書き等を作成する。
Google ドキュメント指示に応じた文章を生成したり、要約や校正をする。
Google スプレッドシートタスクリストや表のフォーマットを生成する。
Google スライドGoogleスライド内でテキストから参考画像を作成する。
Google Chatチャット形式で文章を生成したり、Google Workspace内のデータを探してきてくれる。
※ 遅れて発表されて、まだ利用できないため未検証
Google Meetバーチャル背景で利用する画像を生成する。

AIの基本モデルの学習への利用

一番気になるAIの基本モデルへの学習への利用についてです。Duet AI では、プロンプトや生成されたコンテンツ、ワークスペースのコンテンツを組織外と共有することはなく、基盤となる生成 AI/大規模言語モデルを許可なくトレーニングまたは改善に利用することはないと明記されています。 2

注意345

一方で、スペル候補の承認または拒否、スパムの報告など、Google Workspace機能とのやり取りは匿名化された上で、Duet AIを含む各種サービスでの機能改善に利用されるとも明記されているため、その辺も含めてチェックすることが望ましいと思います。また、Google Workspace Labs 規約など、他の規約にも合意している場合はこの限りではないためご注意ください。規約を確認の上、必要に応じた対応を実施いただけたら幸いです。

読み取りデータのセキュリティ(アクセス制御)

生成AIの活用において、しばしば検索と組み合わせて利用することがあります。この仕組みのことをRAG(Retrieval Augmented Generation≒検索拡張生成)と言ったりもするのですが、RAG(検索拡張生成)をやる場合、検索して読み取るデータの中に、本来ユーザーがアクセスしてはならない情報が含まれてしまうと、情報漏洩に繋がってしまう恐れがあります。

Microsoft 365 Copilot はユーザーが従来SharePointやTeams等で持っている権限と同じ権限で検索拡張生成(RAG)を実施できることをアピールしていたので、その辺がすごく気になりましたが、Google Duet AIにおいては明示的にそのようなことが記載されている公式ドキュメントは見つけることができませんでした。

ただし、Googleのブログ[2]には「Your existing Google Workspace protections are automatically applied.[既存の Google ワークスペースの保護機能が自動的に適用されます。]」という若干抽象度の高めで該当しそうな表現がありました。この記載を持って大丈夫かと信じたいですが、エンタープライズでも安心して使うためにはもう少し明示的に書いてほしいところです。

特に、Google ChatではRAG(検索拡張生成)を使用し、直近の投稿で重要なものをピックアップする等の機能を提供するという記載がありました。Google Chatは筆者テナントではまだ利用できていないため、今後のアップデート後にアクセス権限周りを検証して加筆したいと思います。自社開発の場合、ユーザーの権限の範囲で実施するRAG(検索拡張生成)を作り込むのはかなり大変なので、Googleさんがよしなにやってくれることを期待するばかりです。

実行ログ・レポート機能

管理者としてはライセンスの費用対効果などを測るために、どれだけのユーザーが何回利用したのかであったり、どのような指示を与えたのかが気になるところです。そこでログやレポートについて調べてみましたが、Duet AIの実行ログなどは Drive log eventsに保管されていました。

ただ、費用対効果の説明や分析に使うための情報としては心ともないレベル感です。そちらについてはFBしつつ、今後さらに深堀してみたいと思います。ちなみに、Duet AIを使って生成したコンテンツであっても、ドキュメント単位の過去の履歴を見ると、AIではなくユーザーが編集したものとして記録がのこっていました。

AIによる提案を受け入れて記入するのはユーザーなので、自然な形だと思います。

利用方法

管理者による事前準備

Duet AI for Google Workspace ライセンスの購入と割り当てを行えばすぐに利用できます。ライセンスを購入後、[Google Workspace 管理コンソール] > [ユーザー] などからライセンスをアサインし、しばらく待つと利用開始できます。

注意

Duet AI を使い始めるためには、プレビュープログラムに参加する必要があるとのことでしたが、私が持っているテナントでは特に申請なく利用できました。もし利用できない場合は、プレビュープログラムに申請していただけたら幸いです。また、現在は言語が US English でしか利用できないので注意してください。

Gmail

Gmailの場合はメールの下書き画面でプロンプトを入力することで、メールの下書きを書いてくれます。返信の方向性だけ指示するだけで、それっぽい内容の返信を書いてくれるので非常に便利です。

明日の朝打ち合わせさせてくれという連絡に対して、丁寧にお断りの返信を書いてくれました。

Google ドキュメント

Google ドキュメントでは、左にある鉛筆マークを押すと、プロンプトを入力することができます。文章の生成や、要約の指示、文章の校閲などをお願いできます。

Duet AIに関するブログの下書きを書かせました。

Google スプレッドシート

スプレッドシートでは、右にあるサイドバーでプロンプトを入力します。タスクの洗い出しや、ユースケースにあった表の項目の生成などをお願いすることができます。

Google Workspace導入のタスクリストを作成してもらいました。

Google スライド

Google スライドではスライド中に挿入するための画像を生成することができます。

可愛い猫の画像を生成することを依頼しました。

Google Chat

※筆者のテナントではまだ利用できませんでした。

Google Meetでの利用

Google Meetではバーチャル背景を生成できます。この機能は業務が楽になる印象はありませんが、コミュニケーション活性化やネタという意味では良いのではないでしょうか?

背景画像生成を依頼しました。ちょっと、誰得なのかわからない機能ですが、面白かったですw

おわりに

まだ使えない機能や言語もあるため、実際に業務に適用するところまで考えるとまだまだですが、期待の持てる機能もいくつかあるので、今後のアップデートが楽しみです。今日の内容は概要だけでしたが、より深くユースケース等を紹介する記事もこれから書いていきたいと思います。

参考文献

注釈

  1. Introducing Duet AI for Google Cloud – an AI-powered collaborator ↩︎
  2. Data privacy protections with Duet AI in Google Workspace | Google Workspace Blog ↩︎
  3. Google Workspace Labs のプライバシーに関する通知と規約 ↩︎
  4. ユーザーのプライバシーを保護し、共有する情報をユーザー自身が管理できるようにするための Google の取り組み ↩︎
  5. How Google protects your organization’s security and privacy – Google Workspace Admin Help ↩︎

ぐっち

コンサル会社にてISO27017やISMAP等のセキュリティ規格案件を経験した後、クラティブに入社。セキュリティチーム所属ですが、最近は生成AI等を使ったシステムの開発や導入をやっています。趣味はダンス。Microsoft MVP for AI Platform & M365(Copilot)