コンサルタントを入れたのに、現場が苦しくなるのはなぜか

Miho Ogawa
Miho Ogawa

マーケティング担当

コンサルタントを入れた。資料はきれい。会議は増えた。——なのに、現場は前より苦しくなっている。

情シスまわりの支援に関わっていると、こういう相談をよく聞きます。

原因はだいたい「誰と話しているのか」と「何を前提に提案しているのか」のズレにあります。

外から専門家が入ること自体は悪いことではありません。
社内だけでは見えにくい論点を整理したり、優先順位をつけたり、意思決定を前に進めたりするうえで、外部の視点が助かる場面は普通にあります。

この段階で見たいのは、提案が立派かどうかよりも、現場で運用まで回る形になっているかどうかです。

一方で、入ってくれた人が「経営層としか話さない」「自分の成功体験に強く引っ張られている」という状態だと、支援はだんだん現場から離れていきます。提案そのものは立派に見えても、実際に動かす段階で噛み合わなくなることがあります。

今回は、過去の経験も踏まえながら、うまくいきにくいコンサルティングに共通しやすい2つの特徴について整理してみます。

1. 経営層としか話さない支援は、現場で機能しにくい

外部のコンサルタントがまず経営層や管理職と話すこと自体は自然です。どの会社でも、予算や優先順位、全体方針は意思決定者が持っているからです。

ただ、そのまま現場との接点がほとんどないまま進むと、提案は少しずつ抽象化していきます。

つまり、情報収集として現場に話を聞くことはあっても、提案やフィードバックは経営層や管理職にしか返されない、という形です。こうなると、現場はヒアリング対象ではあっても、議論の当事者ではなくなってしまいます。

実際に手を動かす人は何に困っているのか。どこに時間が取られているのか。どの業務は止められないのか。どのルールは理想ではなく制約なのか。こうした情報は、現場に近い人と話さないと見えてきません。

ここが抜けると、提案はどうしても「きれいな正論」になりやすいです。方向性としては間違っていなくても、実際に進めると次のようなズレが起きます。

起きやすいズレ現場で起きること
運用体制の前提が実態とずれている人員数や役割分担に合わず、実行段階で無理が出る
細かい例外処理が織り込まれていない日々の運用で想定外対応が増える
フィードバックが管理職経由になっている意図がずれて伝わり、伝言ゲームになりやすい
実装や定着の難しさが見えていない後から「現実的に回らない」が多発する

特に情シスやコーポレートの周辺業務では、このズレがあとから効いてきます。
導入方針を決めるところまでは進んでも、運用設計、例外対応、社内説明、定着まで含めると、現場で消化できない提案は続きません。

支援が機能するかは、資料の完成度じゃない。現場が「回せる絵」になっているかどうかです。

だからこそ、外部パートナーを見るときは、「誰と打ち合わせしているか」を意外と丁寧に見た方がいいと思っています。

経営層の理解を取るのが上手い人よりも、現場の制約を言語化できる人のほうが、結果的にプロジェクトを前に進めることがあります。

2. 成功体験に固執すると、提案は顧客に合わなくなる

もう1つ気になるのが、コンサルタント自身の成功体験が強すぎるケースです。

過去にうまくいった型を持っていること自体は、もちろん強みです。経験があるからこそ、判断が早くなり、落とし穴も見えやすくなります。

ただ、その成功体験が強すぎると、顧客の状況を見る前に「今回もこれでいけるはずだ」という発想になりやすいです。

すると、本来は顧客の課題を見て提案を組み立てるべきなのに、だんだん順番が逆になります。

最初に「自分が得意な解き方」があり、そこに合うように課題を読み替えていく。あるいは、顧客が本当に困っていることよりも、自分が説明しやすいテーマ、自分が価値を出しやすい領域に話を寄せていく。そうなると、支援は顧客最適ではなく、提供側最適に近づいていきます。

この状態が怖いのは、提案の見た目だけでは違和感に気づきにくいことです。

経験豊富な人ほど、話はきれいにまとまります。資料も説得力があります。事例も出てきます。だからこそ、受け手側は「たしかに正しそうだ」と思いやすいです。

でも、そこで一度立ち止まって見たいのは、その提案が本当に自社の前提を踏まえているかどうかです。

コンサルタントの役割は、お医者さんにも少し似ていると思います。
最初の訴えだけで結論を出さず、背景(業務・体制・制約・過去の経緯)まで見て、何が本当の課題なのかを整理する。そこを飛ばして得意な解き方に寄せるのは、問診を飛ばして薬を決めるのに近いのかもしれません。

たとえば、次のような違和感があれば注意するのがいいかもしれません。

見え方気になる理由
まだ整理できていない課題より、特定の解決策の説明が先に始まる課題の把握より先に、提供側の答えを当てはめようとしている
こちらの事情を聞く時間より、過去の成功事例を話す時間のほうが長い目の前の顧客より、自分の成功パターンを優先している
「この会社ではどうか」より「他社ではこうだった」が中心になる他社事例の再現に寄りすぎて、自社固有の前提が薄くなる
提案が、顧客の優先順位よりもコンサル側の得意分野に寄っていく顧客最適ではなく、提供側最適の提案になりやすい

もちろん、他社事例は参考になります。ただ、他社でうまくいったことが、そのまま自社でうまくいくとは限りません。業種、規模、組織文化、意思決定の速さ、現場の余力、既存システム、社内の温度感。少し条件が違うだけで、同じ施策でも機能の仕方は変わります。

支援の価値は、成功事例を再生することではなく、いまの顧客に合う形に翻訳することにあるはずです。

では、何を見ればいいのか

観点現場に届きにくい支援🟢 現場に届きやすい支援
会話の相手経営層や管理職が中心現場担当者とも直接話す
提案の出し方得意な解き方から入り、打ち手の手数が少ないまず実現したいことを確認し、課題と制約を整理する
成果の置きどころ導入方針や資料が整う導入後の運用まで回る
現場の感触聞かれたが反映されない話した内容が提案や運用に反映される
✅ 提案内容そのものだけでなく、誰にどう返しているかを見ると、支援の質は意外と見えやすくなります。

では、外部パートナーを選ぶとき、何を見ればいいのでしょうか。もし外部パートナーを検討するなら、私は少なくとも次の項目をチェックしたいです。

チェック項目

  • 現場の担当者とも直接話そうとしている
  • ヒアリングで、課題より先に解決策を押し出してこない
  • 自社に合わない選択肢についても、率直に言ってくれそう
  • 提案のゴールが「導入」だけでなく「運用できること」まで含んでいる
  • 自分たちの言葉で説明し直せるくらい、納得感のある整理になっている

こうした観点でコンサルタントや外部パートナーを見たとき、私は「誰が提案したか」よりも、「現場まで含めてどれだけ解像度高く見てくれるか」を重視したいと思っています。

なぜクラウドネイティブの支援は現場に届きやすいのか

クラウドネイティブには、いわゆる「コンサルタント」という肩書きの人がいるわけではありません。実際には、取扱製品として扱っているSaaSやセキュリティ製品を自分たちで触り倒してきたエンジニアが、その知見をもとにヒアリングし、提案し、必要に応じて導入後の運用まで伴走します。

クラウドネイティブのエンジニアは、製品を“知っている”だけではなく、実際に触って検証したうえで、相手の状況に合わせて論点を整理し、必要なら選択肢として製品も提案します。

だからこそ、机上の整理だけではなく、現場で何が詰まりやすいのか、どこで運用が苦しくなるのかまで踏まえた話ができます。そういう支援が、実際に現場の人に感謝される理由なのだと思っています。なお、クラウドネイティブの支援は最低1ヶ月から始められ、合わないと感じればいつでも見直せます。

🛠️ 一つの製品に精通しているよりも、実際の運用でどこが苦しくなるかを知っていることのほうが、現場では効くことがあります。

外部の専門家に求めたいのは、何かに特化したことだけではありません。こちらの状況を踏まえて論点を整理し、実際に動ける形まで落としてくれることのほうが、長い目で見て価値があります。

コンサルタントへの依頼は、現場を強くするものであってほしい

私は、コンサルタントや専門パートナーに依頼すること自体に否定的なわけではありません。むしろ、社内の人数が限られているときほど、専門パートナーの力をうまく借りることは重要だと思っています。

ただし、その支援が本当に意味を持つのは、現場を置き去りにしないときです。

意思決定者だけが納得する支援でもなく、コンサルタントの成功体験をなぞるだけの支援でもなく、その会社の現場で実際に動く人たちが前に進める支援になっているか。

外部パートナーを選ぶときに見るべきなのは、肩書きや過去の実績だけではなく、その人が誰の話を聞き、どこに提案を合わせようとしているのか、なのだと思います。

そういった細かな部分の見極めが、あとから効いてくるのです。


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