Salesforce 2026年6月セキュリティ強化要件への対応(Okta / Entra ID)

IDチームの前田です。

Salesforce から、2026年のセキュリティ要件強化がアナウンスされました。SSO で Salesforce にログインしている組織は、IdP 側の設定変更が必要になることがあります。Okta と Entra ID それぞれで、作業の流れをまとめました。細かい手順は変わりやすいので、実際の設定時は各公式ページを確認してください。

3行まとめ

  • 2026年6月から、Salesforce で MFA が順次必須になります。特権ユーザーはフィッシング耐性 MFA が必須です。
  • SSO 利用時は、フィッシング耐性 MFA で認証したことを示す信号(AMR)を、IdP から Salesforce に渡す必要があります。
  • Okta は OIN の公式アプリなら基本は自動対応。Entra ID は条件付きアクセスで設定しますが、新要件の細かい伝達はまだ調整中です。

何が変更になるのか

ざっくり言うと、MFA が「推奨」から「必須」になります。しかも特権ユーザーは、フィッシングに強い MFA でないと認証が通らなくなります。

適用は段階的です。

時期対象内容
2026年6月22日〜全ユーザーSandbox 環境で MFA を強制適用
2026年7月1日〜特権ユーザー本番環境でフィッシング耐性 MFA 必須
2026年7月20日〜一般ユーザー本番環境で標準 MFA 必須
2026年6月25日REST API 利用者PKCE 対応の期限

特権ユーザーとは、システム管理者プロファイル、またはデータの全変更や全表示、Apex 開発といった強い権限を持つユーザーです。まずは自社の対象者を洗い出すところから始めます。

フィッシング耐性 MFA として認められるのは、FIDO2 / WebAuthn、パスキー、Okta FastPass、証明書認証あたりです。SMS や TOTP(ワンタイムコード)は、特権ユーザーには使えません。

気をつけたいのは SSO を使っている場合です。Salesforce は「どの方式で認証したか」を、IdP からの信号(AMR 属性)で判断します。なので、IdP 側でこの信号が正しく渡るようにしておかないと、フィッシング耐性 MFA でログインしていても弾かれます。

Salesforce 公式の案内

今回の大元は、Salesforce のナレッジ記事 005317465「Security-Related Product Updates to the Salesforce Platform: User Identity, Data Protection, and Access Controls」 です。プラットフォームのセキュリティに関わる重要なアップデートをまとめた、継続更新型のロードマップ記事です。

公式に書かれている要点は、次のとおりです。

  • 対象: System Administrator プロファイル、または Modify All Data / View All Data / Customize Application / Author Apex のいずれかの権限を持つユーザー(=特権ユーザー)。
  • 適用日: Sandbox は 2026年6月22日、本番は 2026年7月1日 から、特権ユーザーにフィッシング耐性 MFA を強制。
  • フィッシング耐性 MFA の定義: 組み込み認証システム(Touch ID、Windows Hello など)またはセキュリティキー(U2F / WebAuthn(FIDO2) に対応した YubiKey、Google Titan など)。
  • パスキー: ID 検証設定で「パスキーによるパスワードレスログインを許可」をオンにすると、ユーザー名+パスキーだけで要件を満たせます。

対象別の準備手順は、公式記事にまとまっています。

対応するには(作業の流れ)

詳しい操作は各公式ページが最新で正確です。ここでは全体の流れだけ示します。骨格は Okta も Entra ID も共通で、フィッシング耐性 MFA でログインさせる、その事実(AMR)を Salesforce に渡す、最後に Sandbox で検証する、という3ステップです。

Okta の場合

最初に、Salesforce 連携が OIN(Okta Integration Network)の公式アプリか、自前のカスタムアプリかを確認します。ここで作業量が大きく変わります。

  • OIN の公式アプリ: 基本は自動対応です。手動の AMR 設定はいりません。アプリが最新かを確認し、特権ユーザーにフィッシング耐性の認証ポリシー(FIDO2 / WebAuthn / FastPass)を割り当てれば、ほぼ完了です。
  • カスタムアプリ: AMR 属性(session.amr)を手動で追加します。値の渡し方でつまずくこともあるので、公式 FAQ の回避策もあわせて確認してください。

最後に、どちらの場合も SAML トレーサーで AMR が Salesforce に渡っているかを確認します。REST API でプロビジョニングしている場合は、6月25日までに PKCE 対応も必要です。

手順の詳細:

Entra ID の場合

Entra ID は、条件付きアクセスでフィッシング耐性 MFA を要求し、その認証情報を SAML トークンの authnmethodreferences クレームで Salesforce に渡します。流れは次のとおりです。具体的な操作は、各リンク先の公式ドキュメントが正確です。

  1. SSO を設定する

    ギャラリーから Salesforce アプリを追加し、SAML の基本設定(識別子、応答 URL)とフェデレーションメタデータの交換を行います。

    Salesforce × Entra ID 連携チュートリアル

  2. フィッシング耐性の認証方法を先に登録する

    パスキー(FIDO2)などを対象ユーザーに登録します。登録前に次のポリシーを有効化するとロックアウトのおそれがあるため、ここは必ず先に済ませます。

    パスキー(FIDO2)の登録

  3. 条件付きアクセスポリシーを作る

    認証強度で「フィッシング耐性 MFA」を選び、対象に Salesforce(または全リソース)を指定します。まず Report-only で影響を確認し、問題なければ On にします。

    フィッシング耐性 MFA を要求する条件付きアクセス(管理者向け)

  4. ローカルログインを無効化する

    SSO の動作を確認できたら、Salesforce 側でローカル資格情報でのログインを無効化し、条件付きアクセスと MFA を必ず通るようにします。

MFA の信号については、Entra ID が SAML トークンに authnmethodreferences クレームをデフォルトで含めます。条件付きアクセスで MFA を満たすとこのクレームに multipleauthn が入り、Salesforce はデバイスを信頼します(2026年2月3日からの Device Activation 対応)。つまり、条件付きアクセスで MFA を確実に強制しておくことが、そのまま要件を満たすことになります。

OpenID Connect で連携している場合は、AMR クレームを渡せる V1 エンドポイントを使ってください(V2 は対応予定)。AD FS をフェデレーションに使っている場合は、SAML トークンにクレームを含めるための別ガイドの手順が必要です。

⚠️ 注意(Microsoft 公式・2026年6月9日時点)
Salesforce が管理者向けに発表したフィッシング耐性 MFA 要件について、Microsoft は連携チュートリアルで「Entra ID が必要な粒度の情報をトークンクレームで送れるよう、Salesforce と連携して対応中。タイムラインが固まり次第このページで更新する」と案内しています。つまり、フィッシング耐性の細かい伝達はまだ調整中です。本番適用の前に、必ずチュートリアルページの最新の記載と Sandbox での検証を確認してください。

あわせて確認:

最後に。

やることはシンプルです。対象ユーザーを洗い出す。IdP 側でフィッシング耐性 MFA と AMR の伝達を整える。Sandbox で信号の中身を検証する。この3つです。

ただし Okta は、OIN の公式アプリならプラットフォーム側で自動対応が進んでいます。まずは「公式アプリか、カスタムアプリか」を見極めるのが近道です。Entra ID は条件付きアクセスで MFA を強制すれば Device Activation には対応できますが、新しいフィッシング耐性要件の細かい伝達は Microsoft が調整中です。連携チュートリアルの更新を追いつつ、早めに Sandbox で試しておくと安心です。

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