概要
前回の「Microsoft 365 Copilotの新機能:Copilot Coworkをざっくり理解する」の続編です。
2026年6月9日にAnthropic社が発表した最新世代モデル Claude Fable 5 が、Microsoft 365の Copilot Cowork上でも選択できるようになりました(Available today - Anthropic Claude Fable 5 in Microsoft 365 Copilot)。ただし、これまでのClaude(Sonnet/Opus)とは異なり「プレビューAIモデル(データ保持あり)」という特別な扱いになっています。
この記事では「使えるようになった」という紹介にとどまらず、IT管理者目線で有効化の手順と、プレビューAIモデル特有の注意点までを整理しました。
3行まとめ
- Copilot CoworkでClaude Fable 5(プレビュー)が選択可能になった
- Microsoft 365管理センターでの有効化手順(プレビューAIモデルの有効化)がざっくりわかる
- 通常モデルとは異なるプレビューAIモデル特有のデータ保持リスクがある
Claude Fable 5とは:最新世代モデルが選べるようになった
Claude Fable 5は、Anthropic社がMythosクラスの公開版として 2026年6月9日 に発表した第5世代のモデルです。長時間・複数ステップにわたる自律的なタスクや、高度なコーディング・推論を得意とするモデルとされています(Claude Fable|Anthropic公式)。
Copilot Coworkはもともとオフィス業務向けにAnthropic社の技術を取り入れた仕組みのため、最新モデルが選択肢に加わるのは自然な流れといえますが、即使えるようになるのは意外でした。実際に設定を変更した状態でCopilot Coworkのモデル選択メニューを開くと、「自動」「Claude Opus 4.8」「Claude Sonnet 4.6」に加えて、「Claude Fable 5(プレビュー)」が⚠️マーク付きで表示されます。
ここで注目したいのが、通常のClaudeモデルと違って 「プレビュー」表記と⚠️マーク が付いている点と、メニュー下部に表示される注意書きです。
一部のモデルではデータ保持が求められます。ユーザーのプロンプトと応答はモデルプロバイダーによって保持されます。
この一文が、後半の「注意事項」につながる重要なポイントです。なお、こうしたプレビューAIモデルの位置づけはMicrosoftの公式ドキュメント(Preview AI models in Microsoft Online Services)でも説明されています。まずは使えるようにする手順から見ていきましょう。
設定手順:Copilot CoworkでClaude Fable 5(プレビュー)を有効にする
さて、Fable 5を実際に使えるようにするまでの手順を、前回同様にIT管理者目線で解説します。あくまで現時点(プレビュー)の手順であり、一般展開された場合は手順が異なる可能性がある点はご了承ください。
大枠としては以下の通りです。
- 前提となるAnthropicサブプロセッサーの有効化を確認
- プレビューAIモデル(Fable 5)の有効化と対象ユーザーの指定
- ユーザー環境での動作確認
ここで一点、最初に押さえておきたいことがあります。Fable 5を使うための設定は、前回扱った通常のClaude(Sonnet/Opus)の設定とは別に用意されたプレビューAIモデル専用の設定となります。
| 通常のClaude(Sonnet/Opus) | プレビューAIモデル:Fable 5 | |
|---|---|---|
| 対象モデル | Sonnet / Opus | Claude Fable 5 |
| 既定状態 | 商用テナントは概ね有効(日本含む) | 無効(個別に有効化が必要) |
| 規約の枠組み | Microsoft製品規約+DPA | Anthropic独自規約+データ保持 |
通常のClaudeはすでに使える状態になっていることが多いですが、Fable 5はそれとは別の設定で、改めて有効にしてはじめて選べるようになります。前回記事の設定が済んでいるからといって自動で使えるわけではない、という点にご注意ください。
前提となるサブプロセッサーの確認(念のため)
まずはライセンスと権限です。Microsoft 365 Copilotの有償ライセンスがあれば利用可能で、これまでCopilotを使っているのであれば追加費用は不要です。(今後もそうなのか怪しい雰囲気はありますが・・・)
そのうえで、前提として通常のClaudeを使うためのAnthropicサブプロセッサーが有効になっているかを確認します。Microsoft 365管理センター(admin.microsoft.com)にサインインし、Copilot>設定>「Microsoftサブプロセッサーとして動作するAIプロバイダー」を開いて、Anthropicが有効になっているかご確認ください。このサブプロセッサーの枠組みについてはAnthropic as a subprocessor for Microsoft Online Services(Microsoft Learn)で説明されています。
プレビューAIモデル(Fable 5)の有効化と対象ユーザーの指定
ここが今回の本題です。続いて、プレビューAIモデルであるFable 5を有効にします。
そのまま、Microsoft 365管理センターでCopilot>設定>AI Models in previewを開きます。「Anthropic Models with Data Retention」を規約に同意し有効にします。
Copilot Frontierと同様にプレビューAIモデルを選べるユーザーを指定・限定可能です。プレビュー機能なので全社に一律開放するのではなく利用できる範囲を絞り込めます。
- すべてのユーザー
- 特定のユーザー・グループ(Entra IDグループ指定可)
- 無効
組織でCopilotを利用するユーザー層にもよりますが、プレビューモデルですのでまずは限定したパイロットグループに絞るのが無難でしょう。
なお有効化の操作時には、データ保持に同意する旨の確認が表示されます。この同意内容が非常に重要なので、後述の注意事項で全文を引用しています。「プロンプトと応答がモデルプロバイダーによって保持される」ことに同意することになりますので、内容を理解したうえで操作してください。
ユーザー環境での動作確認
実際にFable 5が有効か確認します。
Fable 5を許可したユーザーの環境でCopilot Coworkを開き、モデル選択メニューに「Claude Fable 5(プレビュー)⚠️」が表示されていればOKです。あとはモデルを選択すれば利用できます。
Fable 5だけ⚠️マークが付いていて、下部にも「一部のモデルではデータ保持が求められます。ユーザーのプロンプトと応答はモデルプロバイダーによって保持されます。」という注意書きが出ています。
通常のClaudeとはちょっと扱いが違うぞ、というのが画面からも読み取れるわけですね。この違いについては次の章で詳しく触れます。
注意事項:プレビューAIモデルの取り扱い
ここが最大のポイントです。前回記事では「通常のClaudeはエンタープライズデータ保護の対象で問題なし」という結論でしたが、Fable 5(プレビュー)はその前提が異なります。
有効化時に同意する内容(管理センターの表示)
Fable 5を有効化する際にMicrosoft 365管理センターで表示される同意事項がポイントです。実際の表示は以下の通りです。
Microsoft は、Anthropic のプレビュー モデルをデータ保持機能とともに使用して Copilot や生成型 AI のエクスペリエンスを向上させるオプション機能を提供しています。Anthropic のプレビュー モデルをデータ保持機能とともに使用できるようにすると、お客様は組織を代表して、安全なモデル使用を保証する目的で組織のデータが Anthropic によって保存されることに同意することになります。Microsoft のお客様契約 (製品利用規約および Microsoft データ保護補足条項を含む) は、Microsoft オンライン サービス内からデータ保持機能とともに Anthropic のプレビュー モデルを使用する場合には適用されません。データ保持機能とともにプレビュー モデルを使用する場合は、Anthropic の商用利用規約、データ保護補足条項、および商用データ保持ポリシーが適用されます。これには、Anthropic の使用ポリシーに違反するプロンプトと応答を最大 2 年間保存することも含まれます。 Microsoft Online Services 内で動作するデータ保持機能付き Anthropic プレビュー モデルは、Microsoft のデータ レジデンシー、監査、コンプライアンス要件の対象外であり、Anthropic はゼロ データ保持を保証しません。データ保持機能付き Anthropic モデル特定の Anthropic プレビュー モデルは、Anthropic による顧客データの保持と保存の対象となります (「データ保持機能付きプレビュー モデル」)。お客様の組織によるデータ保持機能付き Anthropic プレビュー モデルの使用は、上記の条件に同意することを条件として可能です。
「Microsoftのお客様契約(製品利用規約・DPA)は適用されない」と明記されています。普段Copilotを支えているMicrosoftのデータ保護の枠組みが、Fable 5には及ばないということです。
通常モデルとプレビューモデルは規約上の扱いが別物
| 項目 | 通常のClaude(Sonnet/Opus) | Fable 5(プレビュー)with Data Retention |
|---|---|---|
| Anthropicの立場 | Microsoftのサブプロセッサー | 提供元として独自規約が適用 |
| 適用規約 | Microsoft製品規約+DPA | Anthropicの商用利用規約・データ保護補足条項・商用データ保持ポリシー |
| データ保持 | エンタープライズデータ保護の対象 | データ保持が必須(違反コンテンツは最大2年保存) |
| データ管理者 | Microsoft | モデル提供元(Anthropic) |
| データレジデンシー・監査・コンプライアンス | Microsoftの要件の対象 | 対象外(ゼロデータ保持の保証なし) |
通常のClaudeは、AnthropicがMicrosoftのサブプロセッサーとしてMicrosoftのDPA(データ保護補遺)の枠内で運用されます。一方Fable 5は「プレビュー」という位置づけで、Microsoftではなくモデル提供元がデータの保存・処理を管理(Anthropic Models with Data Retention)する点が決定的な違いです。
押さえるべき具体的リスク
- データ保持が必須
- プロンプトと応答がAnthropic側で保存される(設定で外せない)。使用ポリシーに違反するプロンプト・応答は最大2年間保存される
- Microsoftの保護枠組みの対象外
- 製品利用規約・DPAが適用されず、データレジデンシー・監査・コンプライアンス要件の対象外。ゼロデータ保持は保証されない
- 本番利用は留意が必要
- プレビュー/実験的モデルは評価・テスト目的に限定。予告なく仕様変更・提供停止・削除の可能性があり、品質や可用性も変動し得る(Preview AI models in Microsoft Online Services)
「使う/使わせる」前のチェックポイント(IT管理者向け)
Copilot CoworkもFrontierというプレビュー版ですが、今回のFable 5はより展開にあたっての留意が必要です。
- 特に機密性の高いデータにアクセスできるアカウントは利用を許可するか検討する
- まずは限定したテストユーザー/グループにのみ有効化する
- 有効化の前にAnthropic社の商用利用規約・データ保護補足条項・商用データ保持ポリシーを確認する
- 自社のコンプライアンスルールと照合のうえで判断する
まとめ
今回は、Copilot Coworkで最新モデルのClaude Fable 5(プレビュー)が選べるようになったことと、その有効化手順、そしてプレビューAIモデル特有の注意点を整理しました。
- 最新のFable 5が選べるようになったのは魅力で、有効化自体は管理センターから比較的シンプルに行えます
- ただし、今回提供されるプレビューAIモデル(Anthropic Models with Data Retention)は、Microsoftの製品利用規約・DPAが適用されず、Anthropic独自の規約とデータ保持が適用されます
- データ保持が必須でゼロデータ保持も保証されず、本番利用も想定されていないことに留意しましょう
Copilot関連は今後も新モデル・新機能の追加が続く領域です。引き続きアップデートを追いながら、掘り下げたい話があればまた記事にしたいと思います。





